パリの望遠鏡カフェの裏にいるコーヒー天才
ファッションフォトグラファーでカフェ好きのニコラ・クレルクは、ニューヨークで修行を積んだ後、アーティザンコーヒーのムーブメントをパリに持ち帰った。ライターのリンジー・トラムタが、魅力的なパリのコーヒーバー『テレスコープ』のオーナーにインタビューし、撮影はアシュリー・ルダエシェが担当。
パリ――10年以上にわたり Vogue、シャネル、エルメスといったブランドの撮影に携わってきたニコラ・クレルクは、今やバーの裏側で自らのアートを表現している。元々はアーティザンコーヒーや焙煎に馴染みがなかったが、ニューヨークでコーヒー界の先駆者たちと学んだ経験が、彼の人生とキャリアを大きく変えた。マルゾッコのエスプレッソマシンとノルマンディー産のミルクが、今やカメラ機材に取って代わっているが、元フォトグラファー兼バリスタは、同じ鋭い観察眼と繊細な手さばきで、提供する一杯一杯の美しさと味わいを追求している。

ニコラは 2012年3月、パレ・ロワイヤルのアーケード裏にある、かつては静かな通りだった場所に『テレスコープ』をオープンした。コーヒー好き、ファッションリーダー、そして都会的な若い親たちが自然と集まるコミュニティを、静かな自信と本物の配慮で育んできた。その結果、カフェは単なる飲食店を超えた存在へと高まっている。
取材の後、ニコラとパレ・ロワイヤル庭園を散策し、レ・ブーゲンビルでアペロを楽しみながら、影響を受けたアートやテレスコープの精神について語り合った。
インタビュー
育った場所はどこですか?
パリで生まれたが、1歳の時にニースへ引っ越し、そこで育った。両親は医師としてパリでの開業を望まず、ニースで生活し、20代前半にスイスへ留学した。
写真はどこで学びましたか?
スイスのエコール・ド・ヴェヴェで学び、帰国後はパリでフォトグラファー(正確にはアシスタント)として働いた。そこでは人生で最も素晴らしい瞬間を数多く経験した。

ヴィンテージなファッション撮影の現場で、ヴェニスや南アフリカ、サントロペへと飛び回り、Vogueの撮影にも関わった。カメラの調整はもちろん、チームの一員として現場に貢献した。
コーヒーのムーブメントに関わることになった感想は?
「素晴らしい、感動的です。お客さんから『この味は驚きだ!豆はどこから来たのか?』とたくさん質問されます。フレンチプレス、エアロプレス、カリタなど、抽出方法やミルク温度にまで興味が高まっています。」
かつては「何を飲んでいるか説明しなくてもいい」と考えていたが、顧客が背景やストーリーを知りたがるようになり、教育の重要性を実感している。

熟練のバリスタが淹れた一杯。
コーヒーに興味を持ったきっかけは?
「初めて本格的なコーヒーを飲んだ瞬間、味覚と脳が反応するのを感じたことが出発点です。その後、自宅での抽出に挑戦し、味の奥深さに魅了されました。今では、温度や抽出時間について語り合うコミュニティの一員です。」

写真からコーヒーへ転向した経緯は?
「コーヒーの記事を撮影する機会があり、最初は『なぜ注目すべきなのか』が分からなかった。リードフォトグラファーは『コーヒーは面白いからだ』と言い、そして『正しいコーヒーを飲んでいないからだ』と教えてくれた。その言葉がきっかけで、今は週7日、私のカフェで働いています。」
良いコーヒーとは?
「豆の選別、加工、保管、輸送、焙煎、挽き、抽出まで、全ての工程が正しく行われることです。最大で10人以上の職人が関わり、ひとつでも手抜きがあれば味で分かります。」
フランスのブリュッセルスタイルのコーヒーはなぜ苦いのか?
「誤った教育が原因です。多くの人は『苦くて目が覚める』というイメージで、砂糖を入れ一気に飲みます。これは薬のような感覚です。」
ニューヨークでの研修は?
「Intelligentsia と Blue Bottle で研修し、世界トップクラスのバリスタたちから知識を惜しみなく教えてもらいました。『来週また一緒に淹れよう』と言われた瞬間、人生が変わったと実感しました。」

夏のニューヨークでは友人とコーヒーを飲み、夜は抽出技術を学び、当初はカフェ開業は計画に入っていなかった。
店舗はどうやって見つけたのですか?
「帰国後も写真の仕事を続けていたが、不動産エージェントに『ニューヨークから帰ってきたばかりでカフェの物件を探したい』と相談したところ、アルメニア系のオーナーが売りに出す物件を紹介してもらった。見た瞬間、こここそが理想のカフェスペースだと直感した。」
テレスコープは幽霊が出ると噂されていますが?
「地下室で何かがいる感覚を常に覚える。かつてアルメニア系の家族が60〜70年住んでいたが、車椅子の祖父が10〜15年前に亡くなってからもその魂が残っているように思える。幽霊というより、友人が側にいるような温かい感覚です。」
開業時の課題は?
「フランス特有の官僚手続きと、まだ形のないコンセプトを形にすること。既存の価値観と競うのではなく、自分の視点と解釈を提供し、顧客に共感してもらうことが重要だった。」

Rue Villedo にあるテレスコープの店構え。
カフェで流す音楽の選択は?
「午後はやや音量が大きめで、サプライズ感を大切にしています。かつて75歳以上の祖母たちが Talib Kweli を聴きながら数時間滞在したことも。音楽は体験の一部で、来店者に日常からのひとときの逃避を提供します。」
店舗情報
テレスコープ
5 Rue Villedo
Paris, France 75001
+33-14-261-3314
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