ヴァレーで過ごす4日間の四季
1日目 夜明けと山々の息吹
午前4時30分、目覚ましの音が魔法のように変わる瞬間。ヘッドランプの光に導かれ、霧に包まれた草原をブーツで踏みしめながら登り始める。足跡を残すたびに暗闇の中で自然が少しずつ目覚め、山々は空へと伸びようとする。やがて、水平線に朝焼けのパステルカラーが広がり、ラ・ポワント・ド・ベルビューを取り囲むように連なる峰々が姿を現す。スイスの『美しい眺め』という名に相応しい、壮大な景色だった。
前夜、私たちはスイス南西部のアルプスに位置するヴァレー州へ向かった。標高4,634mのデュフォールシュピーゲルを擁するこの地域で、今は2,000mを超える高さ、デン・デュ・ミディ地域に立ち、360度のパノラマを堪能している。モンブランまで見渡せるほどの山々が広がり、人より牛の方が多い朝の光景は、まるで春の訪れを告げるかのように新鮮だ。
2日目 アルプスの酪農とチーズ
朝7時30分、牛たちの鈴の音に導かれながら、私たちは丘を下りて朝食の支度をする。牛は自ら小屋へ向かいミルクを搾り、古いアルプの木製テーブルには様々な乳製品が並んでいる。ガイドのバティストは、ヴァレーのチーズはフランス側よりもはるかにクリーミーだと自信満々に語るが、すでに気温はTシャツが着られるほどに上がり、熱々のチーズやシャンパーニュは後回しに。背中のバッグに入れたチーズは、すぐにDIYフォンデュになる危険があるほど暑い。
この地域は、冬はスキーリゾート『レ・ポルト・デュ・ソレイユ』が、夏はハイキングやマウンテンバイクの楽園として賑わう。フランス側は大型アパートが目立つが、スイス側は小さな山岳村が点在し、どこか懐かしい雰囲気が漂う。
3日目 雲に覆われた山と野生ブルーベリー
翌日、デン・ド・ネンダズ峰に黒い雲が流れ込んできても、ヴァレーの人々は驚かない。年間300日以上の日照があるこの地でも、ラ・ク・ノワール湖を背にした景色は圧巻だ。雨粒がジャケットに当たると、空気は秋の匂いを帯び、遠くの雪山が一層美しく映える。
登山道には野生のブルーベリーが点在し、自然のスナックとしてぴったり。山頂の大きな木製十字架は、スコットランド出身の写真家にとっては新鮮な光景だったが、ドイツ人の私にとってはごく普通の教会装飾に過ぎない。下山途中、百年樹のラーチが立ち並ぶバラヴォー森でピクニックテーブル代わりの巨岩に座り、冷めたチーズサンドを頬張る。
日没後は、仲間と山小屋で薪火を囲んだラクレットを楽しむ。
4日目 アレッチ氷河と霧の中の奇跡
翌朝、17世紀に氷河がはるかに大きかったと語る地元民デイヴィッド・ケステンズと共に、濃霧に包まれた谷を歩く。岩は灰と緑の50色以上で彩られ、氷河は見えないが、やがて霧が薄れ、フェタ・モルガナのように氷河が姿を現す。冬が訪れ、ジャケットとビーニーを再び装着した。
氷河の奥深くには巨大な洞窟が彫られ、毎年約200メートルの速度で後退する氷河は、アルプス最大のユネスコ世界遺産でもある。氷の結晶が作り出すターコイズ色の世界に心を奪われながら、私たちは氷河小屋で地元チーズのケーゼシュニッテ(ハムとチーズのトースト)と目玉焼きを味わう。
5日目 サースフェーで8月の雪
旅の最終日は、サースフェー(サースタール)で驚きの雪景色に出会う。8月にも関わらず、白い表面を踏むたびにパキパキと音が鳴り、まるでクリスマスが早く訪れたかのようだ。標高4,000mの峰が18座も連なるこの地域で、オールラリンホルン(標高4,027m)へはメトロ・アルピンで3,500mまで上がり、そこからハイキングで登頂。
頂上からはマッターホルンのシルエットが遠くに見え、スキー場のジャンプで滑る姿が目に入る。下のサースフェーは車の通らない歴史的な木造家屋が並び、空気は澄み切っている。ミッテルアラリンの回転レストランや、渓谷上にガラス床を持つレストランなど、食事もアルプスの絶景と共に楽しめる。




