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マリシャン渓谷での過酷キャニオニング探検記

序章:渓谷への挑戦

アキラが力強く漕ぎ出す様子を見ていた。普段なら筋肉の推進で水流を突き抜けられるはずが、ここでは白と青の渦巻く泡沫に抗えなかった。彼はやむなく流れに身を任せ、まるで排水口に引き込まれるクモのようにボウルの中を回された。水は白く沸騰したミルクのように泡立ち、私の胸中の混乱を映し出していた。マリシャン渓谷の高く垂直な壁は黒く滑らかで、白水のホワイトノイズと岩崩れの反響、そして私たちの叫び声という異様な音だけが響く。

その瞬間、ここに人が足を踏み入れたことはほとんどないだろうと感じた。もし脱出できるなら、アキラがプールの向こう側にある滝の上の岩棚へとたどり着くことが必須だった。勢いをつけて深呼吸し、残りの全エネルギーを注いだ。

計画変更と渓谷への道程

台湾に到着して二週間前、私たちは最初の目標である「チアカン」渓谷の初降下に挑むつもりだった。しかし、雨が続き水位は史上最高に。降下は不可能となり、別の目的地が急務となった。南部は雨の影響が少なく、カオシュン地区のマリシャン渓谷へ向かった。

二か月前なら渓谷の入口まで車で行けたはずだったが、8週間前にマグニチュード6.4の大地震が起き、土砂崩れでアクセス道路が寸断された。地震で114人が犠牲となり、現地では新たなトレイルが瓦礫と森林の中で形作られつつあるという噂があった。重さ33kgのバックパックを背負い、1,000mの斜面を登り、刀の刃のように細い尾根をたどって渓谷へと向かった。

初日の苦闘と夜営

一日中奮闘した末、天候が悪化する直前に尾根に到達した。小さな白い標識は消え、再び見つけたときは急勾配の岩場へと導かれた。暗闇が急速に迫り、岩場での野営を余儀なくされた。余震を聞きながらも、翌日の渓谷進入に備えて休んだ。

翌朝、リグ用のタイローレン・トラバースを張り、深い谷底へと渡った。日が暮れる頃、川辺の荒廃した小屋で火を起こし、濡れた服を乾かしながら体力を回復した。

渓谷内部での作業分担

チームは三つに分かれた。先行隊はルートを整備し、中央隊は通信を担当、後方隊はロープの整理を行った。渓谷は急峻で狭くなり、滝が連続して落ちる姿は圧巻だった。硬い岩のためドリルは使えず、ピトンでの固定に時間がかかった。300mの落下を五つの滝で分割し、雨水が岩壁を流れ落ちる中、私は最後のアブセイルの頂上にたどり着いた。

夜は不快なビビィだったが、精神的に疲れ切っていたため、ぐっすり眠れた。

スピード回復と新たな挑戦

翌日は時間がないと悟り、作業効率を上げた。チームは再びリズムを取り戻し、渓谷の全容が徐々に明らかになった。大きな岩の板の上で緊急ビビィを張り、足元のドミノのように崩れやすい岩の上で夜を過ごした。

最後の峡谷とアキラの奮闘

次の日、川幅が広がり光が差し込む場所に到達した。天候予報は雨が続くと示していたが、私たちは最後の峡谷を抜ける必要があった。まずは15mの滝を滑り降り、深いプールへ飛び込んだ。その後も滝とアブセイルが続き、やがて幅広いプールに辿り着く。ここで唯一の出口が見え、アキラが最強の泳者として挑んだ。

最初は渦に巻き込まれ失敗したが、雨が降り始め水位が上昇。アキラはほぼ力尽きてプールから這い上がり、再び緊急ビビィを張った。20m上の洞窟に乾いた流木があり、火を起こして暖を取った。

翌日は水流を利用したフローティングアンカーを設置し、アキラは安全ロープを引っ張りながら再挑戦。今回は見事に出口へ到達し、技術的に難しいオーバーハングを軽々と越えた。安全地帯に到達した瞬間、彼は primal な叫びを上げ、私たちの歓声と水の轟音が混ざり合った。

完走と帰路

その日、渓谷を抜けて下山開始。短いはずの道のりが14時間に伸びたが、これまで乗り越えてきた困難に比べれば、むしろ自然な流れだった。

MalishanはSidetracked Volume 10に初掲載された。



トラベルノート
  • 深淵へ

    序章:雨の中の夜 ダンと私は交代でテントを出て雨の中を走り、緊急的にトイレへ向かった。体調が悪化するたびにキャンプマットに横たわり、屋根に打ち付ける雨音を聞きながら、アプリマック川の増水を想像した。胃の中で蛇のように蠢く不快感に苦しみつつ、暗い岩壁の間を流れる茶色い水の波に心が揺れた。私たちはまだ『アビスモ(深淵)』の中にいた。 ペルーでのカヤック旅 ペルーに来てほぼ二週間。標高の高い南西部の砂漠で、コルカとコタウアシの渓谷をカヤックで下り、ダン・イェイツとルイジ・カテリアーノという二人の水の守り手と共に旅をした。星空の下、砂浜で語り合う彼らの川への情熱は、昼間の急流と同じく私たちの心を揺さぶった。 コルカ渓谷では、穏やかな白水が岩壁の抽象的な地形を映し出し、狭い空の帯の中でコンドルが旋回した。壁が垂直でない場所では、数百メートルにわたる急な岩礫斜面が視界を奪い、想像だけで足を止めた。 渓谷の奥深くでは、巨大な壁と過酷な景観が私たちの依存心を映し出した。カヤックと装備への絶対的な信頼が、短いながらも濃密なコミットメントを生み出した。 コタウアシからアビスモへ コタウアシを離れたとき

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