トランキ:パタゴニア横断の旅
旅の始まり
11月の初め、南半球の春。金曜の朝、アルゼンチン・バリロチェを出発し、犬のダーシーと馬のサンデンス、バンディドと共に南へ向かう。北パタゴニアのステップを横切り、山々と起伏のある丘を背に、心の中で別れの言葉をつぶやく。
「最初の町にたどり着けますように、最初の10日間だけでも…」と宇宙に囁く。
不安と決意
喜びと孤独が交錯し、目に涙が浮かぶ。未知への恐れ、動物や自分自身のケガ、遠隔地で起こりうる事故への不安――それに加えて、計画が早々に失敗し、バリロチェに戻らざるを得なくなる恐れが心を占めた。ソーシャルメディアでの期待と支援を裏切りたくないというプレッシャーも。
しかし、馬のリズムに合わせて呼吸を整えると、心は次第に落ち着く。上空を舞うコンドルは幸運の象徴。コントロールできないことは手放し、できることだけに集中する――それはパタゴニアの荒々しい自然の中で唯一の選択肢だ。
出会いと影響
バリロチェに移り住んだ頃、エスタンシア・ナウエル・ワピのキャロル・ジョーンズと出会う。彼女は厳しくも正直で、野生の中で馬を操る先駆者だった。その姿に刺激を受け、長距離の馬旅を計画する決意が固まった。「いいね、やってみなさい」――キャロルのシンプルな期待が、私の背中を押した。
旅の風景
道中、出会う小さなポエストやエスタンシアは、パタゴニアの住人たちが旅の本質であることを教えてくれる。ここではコミュニティが全てであり、風は西から東へと激しく吹き荒れ、雨は容赦なく降り注ぐ。時に進むことすら困難になるが、馬たちと共に風を受け止め、前へと進む。
春の終わりにバリロチェを出発してからは、ほとんど人影がない広大な孤独と向き合う。雪に覆われた山々は静寂の中で凍えるように息を潜め、川の増水は水渡りを困難にする。必要なのは水源、草、そして寝袋を広げる場所――シンプルな生活がここにある。
アルゼンチンの伝統と出会い
エスタンシアに到着すると、必ずやってくるのはイェルバ・マテと会話の時間。パタゴニアのガウチョたちはハードワーカーでありながら、ゆっくりとした時間の流れを楽しむ。「トランキ(穏やかさ)」を体現している。
金髪で青い目の外国人として、最初は警戒されるが、馬の世話を自分でできれば徐々に信頼を得る。そんなやり取りの中で、私の存在が徐々に受け入れられていく。
エスタンシア・ヌマンシアでの出会い
急峻な峡谷を抜け、チリ国境付近のエスタンシア・ヌマンシアにたどり着く。オーナーのパブロ・ペレスとその家族、そして妹のフロレンシアと出会う。フロレンシアは20代前半の農学部学生で、ガウチョのように強く、優しい女性だ。
私たちは共に羊の群れを移動させ、朝明けの月明かりの中で馬を鞍につけ、夜は星空の下で語り合う。フロレンシアは将来、エスタンシアを継ぐ夢を語り、情熱と目的意識が周囲に伝染する。
ある日、子羊が川に落ちた。冷たい水と泥の中で命が危うくなるのを見て、私たちは馬のハーネスを使って救助し、自然と向き合う重要性を再確認した。
旅の終盤と別れ
出発前日、風速75マイルに達する強風がメサを吹き抜けることを予測し、出発の決意を固める。出発の朝、再び羊を移動させた後、別れを告げると同時に遠くに虹がかかる――感慨深い光景だった。
メサを登り始めると、雨が激しく降り、やがて雪が降り始めた。夏なのに凍えるほどの寒さと、視界を奪う暗雲に包まれ、道を何度も見失うが、フロレンシアとの思い出が心を温めてくれた。
最終的に、バリロチェからエル・チャルテンまで約1,200マイルを単独で旅し、数多くのアルゼンチン人と出会う。彼らの温かさとコミュニティの力が、過酷な自然を乗り越える鍵であることを実感した。
本記事は Sidetracked Magazine 第13号に初掲載されたものです。




