新たな高み―モンブラン登頂体験記
序章:アルピニズムの黄金時代とモンブラン
21世紀の登山家にとって、山頂へのアプローチは多様です。モンブランを3日で3ルート登る、シャモニー谷から歩いて登る、あるいはカタルーニャのウルトラマラソンランナー、キリアン・ジョルネが4時間57分で往復するなど、様々な挑戦が語られます。ウエリ・ステックが西ヨーロッパの4,000m峰82座を1夏で制覇したように、登山の可能性は無限です。
今年、シャモニーはアルピニズム黄金時代(1865年)から150年を迎え、アルプスで65件の初登頂が記録されました。その中でもモンブラン山脈のアイユイユ・ヴェルトやグラン・ジョラッセは特に有名です。かつてモンブランは未踏の地であり、1786年にガイドのジャック・バルマと医師ミシェル・パッカルが初めて頂上に立ちました。
準備と出発
昨年、私は初めてのアルパインスタイルの4,000m峰としてモンブランに挑みました。1週間の高度順応と装備チェックの余裕は、バルマとパッカルにはありませんでした。彼らはロープもアイゼンもなく、14時間半の連続登攀で頂上に到達したのです。
ガイドのファビオ(Adventure Base所属)と合流し、バックパックの中身を点検しました。クランポン、ブーツ、ヘルメット、ハーネス、レイヤーは必須です。下着は持っていくべきかと友人のジョニーが尋ね、ファビオは笑いながら「ボクサーパンツが必要かどうか教えてほしいか?」と返しました。

アルベール・プレミエ山小屋での初トレーニング
リュート(Le Tour)からロープウェイで2,700m地点のアルベール・プレミエ小屋へ向かい、氷斧とクランポンの使い方を学びました。登山道は急斜面で、ジョニーは重いバックパックに苦戦しました。小屋に到着すると、ファビオは全員の荷物を整理し、不要なものは半分に減らしました。
昼食後は氷河上での実技練習。クランポンの装着ミスで滑落しそうになるハプニングもありましたが、皆でロープで繋がりながらクレバスへの安全対策を体験しました。
夜の宿と語らい
夕食はチーズとジャガイモのボリューム満点メニュー。デザートのチョコレートムースを食べながら、ファビオは「8000m級のヒマラヤ峰は待ち時間が長すぎる。ペルーの標高3,000mでも十分だ」と語り、アルプスの「アイユイユ・ヴェルト」級の難易度を持つ山を登れることが真の登山家だと笑いました。
本格的な登攀へ
翌朝、早朝の薄明かりの中でツアー氷河を登り、3,520mのプチ・フォルシュに到達。風は強いものの、岩の上をロープで結びながらスクランブルし、頂上でハイタッチしました。その後、トリエン小屋へ下り、古風な雰囲気の中で一夜を過ごしました。
次の日はアイユイユ・デュ・ツアーの岩場をトレーニングし、多くの登山者と行列を作りながら進みました。これが本格的なゴルテー路(Goûter Route)への序章です。
ゴルテー小屋までのルート
レ・ウッシュからベルビューケーブルカーで標高2,372mのニッド・エグルへ。そこから急勾配の道を登り、無人のバラック・フォレストゥリエ・デ・ローニュ小屋でクランポンを装着し、テート・ルーズ氷河を横断してグランド・クーロワールへ向かいます。岩落が頻発する危険区間ですが、ファビオは「走れと言ったら走れ」と励まし、無事に通過しました。
テート・ルーズ小屋に到着すると、ゴルテー小屋へ続く急岩壁が目の前に広がります。ここからは手すりのように設置されたケーブルや赤いペイントが道標となり、クランポンをはずさずに登ります。

ゴルテー小屋と夜間登頂準備
ゴルテー小屋は4階建ての円形木造建築で、1,500mの断崖から突き出しています。ここで夜を過ごし、翌朝1時45分に再び出発。ヘッドランプの列が山道を照らし、アンタルクのように登り続けました。
高度が4,500mを超えると手が凍り、血液循環が阻害される痛みが襲いますが、仲間と励まし合いながらレ・ボスの鋭い尾根を登り切ります。
頂上到達と感動
やがて尾根が開け、モンブランのドーム状の氷雪頂に立ちました。西ヨーロッパ最高峰は想像以上に平坦で、サヴォワ地方やアルプス、ジュラ山脈、さらにはヴォージュ山脈まで一望できます。感極まって涙がこぼれ、仲間とハイタッチとハグを交わし、セルフィーを撮影しました。
登頂は「雪の公園を散歩する」ほど簡単ではありませんが、適切なコンディションと高度順応、そして経験があれば、比較的安全に挑める山です。ガイドなしで挑む場合は、判断力とリスク管理能力が不可欠です。
余韻と歴史的重み
帰路で感じたのは、共に過ごした仲間との絆と、日常から切り離された「泡」の中にいた感覚です。さらに、私たちが頂上に立った8月8日は、バルマとパッカルが初登頂した日と同じ日であり、229年の歴史的重みを実感しました。
この記事は、モンブラン登頂の実体験と、アルピニズムの歴史的背景を交えて綴ったものです。




