チリ・チロエ島でのロマンチックなブラインドデート
パタゴニア旅行の途中、プエルト・バラスからチリの太平洋岸に浮かぶ神秘的なチロエ島がガイドブックでほんの一行だけ紹介されていたことが、思わぬ寄り道のきっかけになった。次の目的地はアンデス越えでアルゼンチン・バリロチェだったが、遠回りしてでも訪れる価値はあるのだろうか。
本土チリとは違う雰囲気を持つチロエ島は、16世紀の木造教会(ユネスコ世界遺産)や漁村、手付かずの自然、ペンギンコロニーが点在する、国内でも最も遠隔地に近い地域のひとつだ。
同じく旅をしているブロガーのサムとザブ(Indefinite Adventure)が北上中にチロエ島で会うことを提案。これにより、チロエ島という「先住民族色濃い島」と、同じ志向のデジタルノマドという二つのブラインドデートが実現した。
ブラインドデートは魅力的なアンカッドで始まる
全長180km、幅50kmのチロエ島は、何千年もマプチェ族が暮らし、16世紀にスペイン人が入植した歴史を持つ。スペイン人は「ヌエバ・ガリシア」と改名しようとしたが、地元ではハイリチェ語で「カモメのいる場所」を意味する元の名前が残った。
1800年代まで本土と隔絶されていたため、現代のフェリーが通っても独特の雰囲気は色あせない。
私たちはバスとフェリーでチャオ川(チャコー海峡)を渡り、漁業の盛んな町アンカッドに到着した。空気はひんやりとし、チリが南極領土を主張していることを感じさせ、ペンギンがすぐそこにいる予感がした。
カラフルな漁師の家々が並ぶ港の夕日は、まるでスカンジナビアを彷彿とさせる。一方で、サンティアゴやプエルト・ナタレスに見られる屋外トレーニングステーションが海岸線に設置されており、チリらしいフィットネス文化も垣間見える。
石畳の路地や小さな店が点在する中心部は、エレクトロ音楽が流れる広場でスケートを披露するティーンエイジャーや、音量の大きい車、壁画、モザイク、木彫りのアートで賑わう。家族連れは綿菓子を、年配の人はコーヒーとチーズケーキ(kuchen)を楽しむ、どこかほっこりした光景が広がっていた。
このブラインドデート、期待以上のスタートだった。
カストロで二度目のブラインドデート
次にバスでチロエ島の首都カストロへ向かい、ブロガーのサムとザブと合流した。ブロガーはブエノスアイレスから旅を始めており、オンライン・オフライン問わずノマド同士の出会いは旅の醍醐味だ。
まずは象徴的なサンフランシスコ木造教会を見学し、ザブが提案したルートで街を散策した後、再びアンカッドへ戻った。
カフェ Café Del Puente では、潮が引くと柱が見える高床式の建物(palafitos)を眺めながら、紅茶とスコーンを堪能した。
日曜の静かな通りを歩きながら旅やノマド生活について語り合い、ピンクと黄色の教会が見守る活気あるプラザ・デ・アルマスで締めくくった。
タキシードを着たペンギンとのデート
アンカッドに戻り、プニヒル・ペンギンコロニーへのツアーを予約。マゼランペンギンとフンボルトペンギンが混在する珍しいコロニーだ。
約20マイル(30km)のミニバンで農地を抜け、太平洋へ向かう。専用の車輪付きカートで足元が濡れないように乗船し、ペンギンやラッコ、鳥類、ウミツバメが行き交う小島群へと案内された。
マゼランペンギンは背中が黒く腹が白、胸に二本の帯がある。一方フンボルトペンギンは灰色がかり、胸帯は一本だけ。野生のペンギンに初めて間近で出会う瞬間は、まさに魔法のようだった。
帰路は広大で人の手がほとんど入っていない大地を横切り、チロエ島が橋で本土と繋がっていないこと、フェリーだけが往来を支えていることが、20世紀初頭の孤立感を今も残していることを実感させた。
もっと滞在したい理由
寄り道は全く後悔していないが、もっと多くの無人ビーチや国立公園、村落を訪れたかったという思いは残る。バスで見える未踏の田園風景や、イエズス会・フランシスコ会が築いた150以上の木造教会は、次回の旅でぜひ足を伸ばしたいスポットだ。
レンタカーはプエルト・モントやプエルト・バラスで1日約60ドルから借りられ、グループ旅行に最適。もしくは10時間のフルデイトツアーに参加すれば、ユネスコ教会やカストロの風景、ペンギン観察まで網羅できる。





