ジョーダン #1: ペトラ、なぜ中東へ行く価値があるのか
ヨルダンの岩の都市ペトラは、壮大な彫刻建築と岩のトンネルが織りなす景観が圧倒的です。たとえ中東全域を回らなくても、真っ赤な太陽の下で数時間過ごす価値は十分にあります。
ペトラの歴史概略
古代アラブ征服以前、ペトラ渓谷は遊牧民や狩猟採集民が住む場所でした。紀元前5世紀までエドム人が居住し、その後ナバテア人が支配を確立。インド・エジプト・南アラビア・シリアを結ぶ交易路の交差点に位置したため、急速に繁栄しました。
ナバテア人は銀・没薬・鉄・香料・銅・金・象牙などを交易し、他国の商人に課税することで富を蓄えました。周辺勢力の侵略を防ぎつつ、紀元前3世紀にはセルユス帝国の衰退を機に勢力を拡大しました。
ローマのポンペイ将軍やヘロデ大王、クレオパトラ、アウグストゥス皇帝の遠征にも抵抗したものの、最終的にローマと協調し、軍事支援を行いました。この時期がペトラの黄金期で、人口は約4万人に達しました。
ナバテア人は砂岩に人や動物の像、葉っぱの彫刻を施し、熱い太陽の下で色彩豊かな芸術を創り出しました。エジプト・アッシリア・ヘレニズム・ローマの様式を取り入れ、独自の岩の都市を築いたのです。
しかし紀元106年、ローマ皇帝トラヤヌスがペトラを征服し、アラビア属州の首都としました。ローマ支配下で都市は再び繁栄し、パクス・ロマーナの時代に観光地としても栄えました。325年のニカイア公会議以降はキリスト教が広がり、7世紀の十字軍時代にはサラディンに破壊され、地震も相まって衰退しました。
現在残る主な見どころ
1965年以降の発掘調査により、ペトラは「新七不思議」の一つに選ばれました。主な遺構を紹介します。
アル・カズネ(宝殿)
ペトラで最も有名な建造物です。紀元1世紀に掘られた高さ40メートル、幅25メートルの岩窟建築で、砂岩の柱や人像(イシス・ビクトリア・アマゾンと推測)と4メートルの石壺があります。日光の角度で色合いが変化し、幻想的な光景が広がります。
内部は装飾が少なく、入口は4メートルの高さで柵により保護されています。
アド・ダジル修道院
ビザンティン時代にキリスト教修道院として使用された巨大建造物で、全長47メートル・幅48メートル。最後のナバテア王ラベル2世の時代に造られたと考えられています。内部には岩に彫られたベンチと階段付きのニッチがあり、十字架の痕跡がキリスト教の遺構を示しています。
カスル・ビント・フィラウーン(ファラオの娘の宮殿)
ペトラの主要路上にある神殿遺構で、エジプトの伝説にちなんだ名前です。1世紀初頭に建設され、壁長32メートル・高さ23メートルの四角形です。外壁には多数の彫刻が施されましたが、現在はほとんど失われています。
王墓群
王壁沿いに位置する墓群で、王宮墓、シルク墓、コリント式墓、壺墓などが含まれます。墓としての確証はあるものの、内部に遺体は見つかっていません。
ペトラ劇場
最大で1万人収容可能な劇場で、紀元1世紀に建設され、トラヤヌスの占領後に拡張されたとされています。
セクストゥス・フロレンティヌスの墓
ローマ帝国のアラビア・ペトラエア属州総督が紀元130年頃に死去し、築かれた墓です。墓碑には彼の経歴が刻まれています。
ローマ兵士の小さな墓も多数点在しています。
その他の見どころ
ジンの岩(スフール・エル・ジン)やオベリスク墓など、数多くの遺構があります。狭い峡谷や砂岩の風景、ベドウィンの姿も観光の魅力です。
ペトラの全体マップ
アル・カズネだけでなく、ペトラは広大な都市遺構が点在します。主要ルートは往復約2時間の徒歩で、太陽の下ではかなりの負荷がかかります。さらに遠くのアド・デイル寺院へは往復7時間ほどかかります。
実用情報
入場料
1日チケットは90ジョルディ(約130米ドル)、宿泊者は50ジョルディ(約70米ドル)です。夜間ツアーは追加15ジョルディで、月曜・水曜・木曜の20:30〜22:30に開催されます。2日券は55ジョルディ、3日券は60ジョルディです。
「無料」乗馬
入場料に短時間の乗馬が含まれますが、実際は別途料金がかかります。疲れたときに利用すると良いでしょう。
水分補給
途中で売店は稀です。大量の水を持参するか、途中で補給できるように計画してください。
パスポート
入場時にパスポート提示が必要です。
営業時間
夏季は06:00〜18:00、冬季は06:00〜16:00。夜間入場は別料金で可能です。
所要時間
主要観光ルートは約4時間ですが、全体を回るには2日以上必要です。
気候
日中は日差しが強く、気温は40℃を超えることも。帽子や日焼け止め、十分な水分が必須です。
ガイド
現地で有料ガイドを依頼できますが、案内板は英語・アラビア語で整備されています。
ショップ・トイレ
売店は不定期に出店し、クレジットカードは一部のみ対応。トイレは無料で利用できます。
服装
歩きやすい靴、長袖・日除け、そして現地の文化を尊重した服装が望ましいです。
その他
- 携帯電話は全域で電波が入りますが、Wi‑Fiは速度が遅く、セキュリティに注意。
- ロバやラクダのレンタルは可能ですが、体力に自信があれば徒歩での散策をおすすめします。
- 高齢者向けに人力車もあります(別料金)。
ペトラへのアクセス
タクシー
アカバ国境からワディ・ムサまで約49ジョルディ、アカバ市内からは約35ジョルディです。マアンからは約9ジョルディ、ワディ・ラムからは約20ジョルディです。
バス
アンマンからJETTバスで約3時間、片道11ジョルディでペトラへ向かえます。帰りは午後5時発です。
自家用車
アカバからは道路47号線→35号線でワディ・ムサへ。駐車場はペトラ・ビジターセンター近くにあります。
宿泊施設
ワディ・ムサの街に多数のホテルやホステルがあります。予算重視ならオリエントゲートホステル(1人6ジョルディ)やバレンタイン・インが選択肢です。レストランやショップは近くなるほど価格が上がるので、事前に水や食料を確保しておくと安心です。




