オーバーツーリズムの影響と回避策
人は自分がすべての問題の犠牲者だと考えがちです。地球温暖化、カリブ海の住居喪失、ニューデリーや北京の大気汚染、コロナウイルス――実はこれらはすべて人間が作り出した問題です。オーバーツーリズム(過剰観光)も同様で、最大の被害者は旅行者でも地元住民でもなく、自然そのものです。インドの有名観光地でも、ヒマラヤのデオ・ティバ峰のような人里離れた場所でも同じことが起こります。
オーバーツーリズムの影響と問題点
私がメヘラヤ州の東部カシ丘陵にある小さな村・ノングリヤットを再訪したとき、5年前に訪れた頃の思い出が崩れ落ちました。かつてはゆったりと過ごせる最高の旅行先だったのに、観光客の波に飲み込まれ、村全体が徐々に衰えていく様子が目に見えて分かりました。

2015年に初めて訪れたときは、二層の根橋に一日中座り、周辺のプールで好きなだけ泳げました。しかし2020年になると、プールでの入浴は厳しく制限され、5人以上のグループで根橋を渡ることも禁止され、写真撮影は2分以内に制限されました。

さらに、かつては温かく迎えてくれた地元の家族も忙しさに追われ、子どもたちは偽の『天然はちみつ』を売るだけの姿に変わっていました。根橋や周辺の植生・動物相も徐々に衰退しているのです。
関連記事:2015年はGoogleにもほとんど情報がなかったノングリヤットが、2020年には1日千人以上の観光客で賑わうまでに変化した経緯。
オーバーツーリズムがもたらす広範な影響
ノングリヤットだけでなく、近年人気が高まったすべての観光地で同様の現象が見られます。ヒマラヤの小さな村がシムラやオーティのように変貌し、高山の峠道が車の渋滞で窒息しています。
バチカン市国でも、一般公開時間帯は大勢の中国団体が訪れ、写真撮影すら困難になるほど混雑。そこで私は「スキップ・ザ・クラウド」ツアーを利用し、一般開門の1時間前に入場しました。

格安航空会社や低価格ツアー、割安のAirbnbが普及した結果、観光地は訪問者数に耐え切れず、地元住民が追い出されるケースが増えています。
各地の自治体は対策に乗り出しています。バルセロナは新規ホテル建設を禁止し、チリはイースター島での滞在期間を短縮、ヴェネツィアはAirbnbの利用を制限、アイスランドは外国人の不動産購入を抑制するなど、世界中で「もう限界だ」という声が高まっています。

オーバーツーリズムの主な原因は?
要点は「大規模グループ」。ソロ旅行者が多少ゴミを出しても、30人規模の団体が大声で笑いながら歩くと、地元住民の生活が著しく乱されます。旅行者と住民のバランスを保つことが必要ですが、大規模ツアーがその均衡を崩しています。
完全に団体旅行を禁止するのは現実的ではありませんが、人数制限や予約制を導入すれば、過剰観光の問題は自然と緩和されるでしょう。

自分がノングリヤットを世界に紹介したことを後悔したこともありますが、根本的な責任は「持続可能な観光」を無視して利益だけを追求する旅行会社にあると考えています。
Airbnbは当初、地元住民が自宅を宿泊施設として提供できる画期的なプラットフォームでした。しかし近年は拡大路線に走りすぎ、過剰な宿泊施設が生まれ、結果として生態系に負荷をかけています。

解決策:責任ある旅行(Responsible Tourism)
ソーシャルメディアの波に乗らない
インスタグラムで見かけた「家船での自撮り」や「絶景のハッシュタグ」に影響されて同じ行動を取ると、結果的に観光地はさらに混雑します。流行に盲目的に従わず、情報発信の影響力を自覚しましょう。
安価な団体ツアーを避ける
格安ツアーはコストパフォーマンスが高い反面、目的地に過度の負荷をかけます。特にラダックのバイクツアーやヒマラヤのトレッキングでは、人数制限が必要です。
オフシーズンに旅行する
ピークシーズンは天候が良いからといって訪れると、混雑と環境負荷が増大します。オフシーズンの旅行は価格が下がり、現地の生活にも配慮できます。
事前に情報をしっかり調べる
目的地の歴史・文化・環境に関する知識を身につけることで、無意識のうちに与える負荷を最小限に抑えることができます。
酔っ払い旅行はやめる
旅行の目的が酔うことだけであれば、遠くまで移動しても意味がありません。現地の文化や自然を楽しむ姿勢が大切です。
環境に優しい行動を心がける
プラスチックを持ち込まない、CO₂排出を抑えるなど、基本的なエコマナーは忘れずに。




