黄河の西側:甘粛省を巡る壮大な旅
広大な黄河西部の荒野は、遠くの岩壁に吹く風のささやきだけが響く静寂です。澄んだ青空の下、太陽が甘粛省の大地を霞ませ、まるで夢の中にいるかのような感覚に包まれます。
甘粛は中国でも人口が最も少ない省のひとつです。省都蘭州は400万人以上が暮らす活気ある都市ですが、真の魅力は広大な自然の中にある孤独感です。

シルクロードの細長い回廊は、長城の西端や仏教がアジアに広がった足跡を垣間見ることができ、マルコ・ポーロの旅路をたどる絶好のルートでもあります。
高速鉄道や道路整備が進み、旅行者が少ない今こそ、甘粛の広大な自然をゆっくり堪能するチャンスです。

荒涼とした砂丘と異世界の風景
甘粛はゴビ砂漠の平原から標高5,500メートルの祁連山まで、乾燥した大地が広がります。西へ向かうと黄河の西側(河西)に位置するヘクシ回廊が狭まっていき、乾燥した丘陵が歴史的な流刑者の道として知られています。河川は深い峡谷を刻み、夏のモンスーンは秋の丘を奇妙な形に変えます。

代表的な景観としては、赤く輝く水銀公園、広大な連山、そして赤い雲のような奇岩があります。臨夏(リンシア)近くの黄河はビンリン寺のダムへ流れ込み、灰色の尖った丘が静かな貯水池を見守り、そこに壮大な仏像が佇みます。敦煌では『歌う砂丘』に登り、風が砂を奏でる音を体感し、砂すべりでスリルを味わえます。
張掖の西にある丹霞地質公園は、オレンジ・赤・黄・青の層が夕焼けのように重なり合う「虹の岩」で有名です。新設された遊歩道やバス、手すりが安全に配慮しつつ、繊細な地層を守っています。朝日の光が差し込む時間帯に訪れると、幻想的な光景が広がります。標高差が大きいため、薄手の上着を持参すると安心です。

敦煌から約200km離れた雅丹国家公園は、張芸謙監督の映画『英雄』の舞台にもなった荒れた岩が連なる不気味な景観です。ここへは、長城の最西端である玉門関(漢代)を通過する必要があります。
蘭州のラーメン天国
蘭州の手延べ麺(拉面、lāmiàn)は中国全国で知られる名物です。職人が生地を何度も伸ばし、細く切り出した麺は、濃厚な牛肉スープと唐辛子、ハーブとともに提供されます。街角の屋台では数元で一杯が楽しめますが、1954年創業の「馬子路牛肉麺」は本場の味を求める旅行者におすすめです。

夜になると蘭州のナイトマーケットが灯りで彩られ、串焼きやグリル野菜、カリカリのジャガイモ、羊頭肉などが並びます。黄河ビールと合わせて楽しむのが定番です。

象徴的な石窟と巨大仏像
甘粛はシルクロードの歴史が色濃く残る石窟群と仏像で有名です。インドから伝わった仏教は中国の風土と融合し、独自の姿を生み出しました。
主な見どころは、ビンリン寺の巨大な釈迦像と保存状態の良い石窟(来訪者が少なく静かです)、天梯山の湖を見下ろす仏像、馬蹄山の壁面にある巨大仏像、そして麻地寺の旗が飾られた洞窟です。

中でも莫高窟は、世界最古の印刷本である『金剛経』が所蔵されている宝庫です。藍色の壁画と照明が美しい洞窟は、2015年に近代的な観光センターが整備され、訪れやすくなっています。

甘粛南部のラブラン寺は、チベット仏教の大本山で、巡礼者が巡礼(kora)を行います。近くのラングムシは標高の高い高原に残る本格的なチベットの雰囲気が味わえる拠点です。
高速鉄道で巡る絶景
近年整備された高速鉄道と観光寝台列車により、甘粛の移動は格段に快適になりました。車窓からはゴビ砂漠の夕焼けが星空へと変わり、映画のような風景が広がります。

3週間で全行程を回ることも、10日間でハイライトだけを巡ることも可能です。まずは蘭州の空港へ(現在は地下鉄が整備済み)。そこからバスや列車で天水の馬蹄山、ビンリン寺、夏河、ラングムシへ向かいます。
寝台列車Y667で砂漠越え敦煌へ向かい、砂丘、莫高窟、雅丹国家公園を堪能。その後は高速鉄道で嘉峪関要塞、張掖の丹霞、武威の遠隔仏像へと移動し、効率的に観光・食事・星空観賞を楽しめます。





