レバノン山岳トレイルで国境を越える絶景ハイキング
レバノン山岳トレイルの概要
全長470kmにわたるレバノン・マウンテン・トレイルは、このコンパクトな中東諸国の全域を縦走し、古代の杉林やオリーブ畑、滝、ローマ神殿、岩壁に刻まれた修道院など多彩な風景を巡ります。過去の紛争やベイルートの華やかなナイトライフに隠れがちなレバノンを、自然と歴史の両面から深く体感できるハイキングです。
トレイル沿いや周辺の村々では、静寂と安らぎが広がります。全区間を歩き切ることで、レバノンの豊かな歴史と息を呑むような自然美への理解が深まります。以下では、日帰りや短期滞在に適した、特に景観が美しい区間をご紹介します。

ユネスコ世界遺産・カディシャ渓谷への巡礼
カディシャ渓谷は、レバノンでも最もドラマチックな景観が広がります。鋭く切り立った岩壁がオークやサイプレスの丘陵を見下ろし、果樹園と赤瓦の屋根が点在します。冬は雪が岩壁を覆い、春になるとピンクやイエローの野花が咲き乱れ、清流が谷底を刻みます。

初期キリスト教の修道院群として栄えたこの渓谷は、ユネスコの世界遺産にも登録されています。岩壁に彫られた古代石造修道院や礼拝堂は、目立つものから自然に溶け込むものまで様々です。主な見どころは、デイル・マル・アントニオス・コザヤ、デイル・マル・エリシャ、デイル・カンヌビンです。45分ほどの小径を歩けば、コロンビア出身の隠者フアダ・ダリオ・エスコバー神父が住むサイデット・ハウカ礼拝堂に辿り着きます。宿は、詩人・画家カリール・ジブランを讃える博物館があるブシャルで取ると便利です。

シューフ生物圏保護区で古代杉の森を散策
レバノン国旗に描かれるシンボル、古代杉はシューフ生物圏保護区でその姿を保っています。広がる水平な枝の下を歩いた後、雲に覆われた樹冠が一望できる開けた尾根へと登ります。ベイルートの蒸し暑い夏を逃れ、シューフの爽やかな空気を満喫できるのは格別です。1996年に設立されたこの保護区は面積5万ヘクタール、250km以上のトレイルが整備されており、静かな自然探検に最適です。
ドゥーズ派の精神的中心地でもあるこのエリアでは、癒しの聖地ナビ・アユーブや、十字軍時代の岩壁要塞ニハ砦を通り過ぎます。

タヌーリンのバータラ・シンクホールと杉林の驚異
タヌーリンはレバノンで最も密集した杉林が広がる地域です。トレイルはバータラ・シンクホールへと続き、255mの滝がジュラ紀の石灰岩渓谷へと流れ落ちます。春の雪解け水が最も壮観です。石灰岩の壁はハイカーだけでなく、ロッククライマーにも人気です。
バシンタ文学トレイルで作家たちの足跡を追う
全長22kmの支線は、ミハイル・ナイミー、スレイマン・ケッタネ、アブドゥラ・ガンムなどレバノンの著名作家を称えます。また、アミン・マアルフの小説『タニオスの岩』に登場する場所も点在。バシンタからはサンニーネ山の絶景と、冬のスノーシューイングが楽しめます。

ジェジンとブカシンで滝と松林を巡る
ジェジンは滝と鍾乳洞で有名です。近くのブカシンには地中海最大級の松林が広がります。新設の22kmサイドトレイルは、ジェジンからニハへと森を抜け、地中海と谷のパノラマビューを提供します。
地獄の谷(ワディ・ジャハンナム)のドラマティックな風景
あまり知られていないこの秘境は、深い峡谷と切立った崖、そして一年中氷河のように冷たい川が特徴です。近隣のスフィーレにはレバノン最大級のローマ神殿群があります。

ハイキング計画の立て方
全長470kmを一気に挑戦するも、区間ごとに分けても楽しめます。レバノン山岳トレイル協会は毎年4月に、両端からの約1か月間の団体スルーハイクを開催し、200名以上が参加します。10日間のバージョンは10月に実施。詳細と申し込みは公式サイトをご確認ください。
個人で挑む場合は、距離と標高を示した地図をダウンロードし、計画を練りましょう。山岳キャンプは制限があるため、村のB&Bやゲストハウスに宿泊し、レバノンならではのホスピタリティと料理を堪能してください。

ガイドの活用をおすすめします
トレイルの一部は標識がなく、特に南部国境エリアはレバノン軍の許可(サイーダでパスポート提示)と地雷リスクがあります。安全確保のため、ガイドやツアーグループの利用を強く推奨します。




