東グリーンランド荒野のバックパッキング記録
出発と準備
イヌイットの狩人が笑いながら銃を手渡し、こう言った。「心配しないで、簡単だ。北極熊の方向を狙って頭か胸を撃てば、熊は逃げるか死ぬ」――私たちはタシラアック・フィヨルドの奥深くに投げ出された。エンジン音が遠ざかる中、3週間後に会おうと別れを告げたが、文明からは160海里離れた場所だった。
風に乗って歌が響く中、4人は東グリーンランドの荒野を横断する自給自足のトレイルへと踏み出した。フィヨルドは巨大な氷河谷・タシラップ・クアへと続き、そこから北へ3日間で氷山が漂うセルミリク・フィヨルドの外縁部へ向かう。セルミリクは氷床の最後の液体境界であり、北極圏の境界でもある。そこから南へ14日間歩き、温かいシャワーが待つ地点へ戻る計画だ。
氷河と野生動物
地球温暖化はイヌイットの生活に深刻な影響を与えている。グリーンランド氷床の氷河は急速に溶け、北極の海氷も年々南下し、北極熊が人里へと近づいている。かつて夏は「北極熊がいない」地域だったが、近年はフィヨルドやイヌイットの集落周辺で熊の目撃情報が増えている。出発地点のクルスックでも、最近の遠征団で熊に遭遇したという話が聞かれた。
狩人は4kgのロシア製ライフルを持たせたが、3分割できるので分担できる。銃は持たないバックパッカーのために抽選が行われる。無樹林のツンドラでは熊は簡単に見つかるが、昼間は銃は不要。危険は夜に潜む。狩人は「夜に熊がキャンプに忍び込むかもしれない。装填された銃が唯一の生存手段だ」と警告した。
軽量化への挑戦
軽量バックパッキングには徹底した準備が不可欠だ。必要な装備を何週間も検討し、食料は空気を抜いた小さな袋に分割した。出発数週間前の物流ミーティングでは、熊が出没する地域でのライフルの有用性について激しい議論が交わされた。射撃経験のない私たちにとって、銃はむしろ危険になる可能性があると指摘された。
旅の様子
タシラップ・クアの谷底に到着すると、低い雲と小雨、微風が漂う。灰色の大河と青い氷河が谷底に広がり、ほぼ凍結した水が流れ出す。足元が凍えるので、ネオプレン製の靴下は必須だ。食料は7日分で、次の食料キャッシュまでの距離を測っている。
上流へ数時間進むと、北極熊への恐怖は薄れ、無数の小さな生き物たちが現れる。蚊は血を吸い、皮膚に痕跡を残すが、病原体はほとんど心配無用だ。極寒の環境に体が慣れ、生活リズムは「歩く・食べる・飲む・テント設営・睡眠・氷河の水に足を浸す」だけになる。
道中、仲間は即興の歌やパロディーで盛り上がり、氷河や蚊、銃、酒、匂いについて語り合う。高気圧が雲を晴らし、初めて北極の太陽が顔を出す。重い雲に隠れていた氷河の峰が姿を現し、肉体的な挑戦が精神的な解放へと変わる瞬間だった。
最終的にセルミリク・フィヨルッドの上流、ニンゲルティへ向かう。夏の北極は日が沈まないが、体は徐々に疲労を感じ、夜は暖かいダウンジャケットで眠りにつく。
ある日曜日の午後、氷の上に座ると、蚊は減り、アザラシが氷の上に顔を出した。潮が引くと、ビーチはまるで童話のように岩と氷山に囲まれ、青い光が岩に反射した。思わず息を呑むほどの美しさに、言葉が出なかった。
ビーチは岩が多く、砂はごくわずか。クイックサンドはもう見たくない。
氷は静寂に包まれ、風もなく澄んだ青空が広がる。岩帯を回避しながら登ると、突如5メートルの潮汐波が岸を襲い、テントやバックパックが流された。銃は役に立たず、心拍数は上がり続けた。10kmにわたるフィヨルドが落ち着くまで、何時間もかかった。
この壮大な景観は言葉では語り尽くせない。静寂の中で、再び野生の広がりへと足を踏み入れる。




