スコットランド最後の荒野への冒険
旅の序章
ロックダウンで窓の外だけを眺めていた一年。パンデミックが国全体を閉ざす中、私たちはスコットランド高地の壮大さを初めて目にすることで、魂の栄養を取り戻すことにした。目的は遠隔地をカヌーで巡り、冒険を記録することだったが、やがてそれは「大自然と生きる」深い欲求へと変わっていった。
ロッホ・マリーへの出発
友人のイアン・フィンチと共に、ロックダウン中に研究したルートを実践するべく、ロッホ・マリー東端から旅を始めた。前年度に900マイルのカヌー旅を経験しているため、パドルのリズムはすぐに自然と調和した。
数時間でロッホ・マリー西端に到着し、島々のネットワークへと進んだ。島は何世紀も生き続けたスコットランド松が覆い、苔の緑が陰影を作り出す。松葉の間を吹く風と、ミジンコのようなスコットランドの蚊を捕食するトンボの羽音が、静寂に彩りを添えていた。
島のキャンプと夜の静寂
夕暮れが迫ると、砂浜のある小さな島にテントを張った。雨のにわか雨が光を差し込み、スリオック山のクォーツ岩がキラキラと反射した。薄明かりの中、赤い雄鹿が丘を巡り、テントの周りではフクロウの鳴き声が響く。風が止み、星空が松の間から見えた瞬間、ウイスキーの一杯でその美しさを祝福した。
フィオン湖へのポートレッジ
翌朝、ロッホ・マリー北岸へ向かい、カヌーに車輪を装着して6マイルのポートレッジを開始した。イアンは救命胴衣を牽引ハーネスにし、私は後方から押しながら進んだ。途中、マダニに刺されるという小さな試練もあったが、山々に囲まれたフィオン湖の壮大な眺めがすべての苦労を報いてくれた。
フィオン湖での試練
カヌーを湖に入れた瞬間、風が強まり、浅瀬に岩が顔を出した。さらに、遠くの山から戦闘機の轟音が聞こえ、RAFタイフーンが頭上を横切った。風が不規則な波を作り、岸へ戻るか、対岸のボシへ直行するかの選択を迫られた。
風が一瞬止んだ隙に全速力で漕いだが、再び突風が戻り、船首が水に浸かり始めた。日が沈みかけた頃、砂利の浜にたどり着き、カヌーを引き上げたが、ヘザーの茂みを越えてボシへ向かうのは体力的に不可能だった。
カヌーを岩陰に置き、重いドライバッグを背負い、懐中電灯の光だけを頼りに4マイルのヘザー原を歩いた。足は刺すような痛みで止まったが、イアンの励ましで前へ進んだ。
カーンモア・ボシでの安息
3時間の苦行の末、カーンモア・ボシの扉を開けると、意外にもベッドとマットレスが2つ用意されていた。暖を取る暖炉はなかったが、ジェットボイルで湯を沸かし、簡易食をすぐに摂取できた。
夜は激しい雨と風が屋根を叩き、外の世界は濃霧に包まれた。翌朝、霧の中にそびえるムノロの姿が見え、再びカヌーを取り戻す必要があった。
地元ガリィの助けと再挑戦
若いガリィのジョーとグレゴールが四輪バイクで現れ、カヌーを湖の反対側へ運んでもらう申し出を受けた。彼らのボートでカヌーを回収し、再び湖を横断することになった。
しかし、風が強くカヌーは不安定。湖全体を回りながら戻るしかなかった。ボシに戻った後、天候が数日間悪化すると聞き、無理なポートレッジは危険と判断し、再びボシで待機することにした。
最後の逃走と帰路
翌朝、風がやや落ち着いた隙に8kmのパドリングでジェットへ向かい、そこからポールウィーの町へポートレッジし、車までのリフトを手配した。道に戻り、カヌーに車輪を付けて8マイル歩き、川辺でキャンプした後、翌朝に小さなカフェの前にカヌーを置き、冒険は幕を閉じた。
この旅は目的地や完走よりも、自然の中で自分たちの選択と向き合うことが何よりの価値であると教えてくれた。




