たった一息で変わる体験
序章
深く息を吸い込み、腹式で呼吸を整え、信仰と自然への感謝、そして命への感謝に思いを馳せた。友人のアンドリューが氷に開けた穴の横で浮かんでいた。「準備ができたら、いつでもね」と言う彼の言葉に背中を押され、最後の一息を吸い込み、スノーケルを外して、ヒューロン湖ジョージアンベイの暗く異世界のような深みへと潜った。
氷と闇の中へ
心拍が高鳴る中、私はゆっくりと沈み始めた。目の前には光を受けて揺らめく船舶残骸の影があり、周囲は無限に広がる薄青い氷のシートが海の闇を覆っていた。ウェットスーツに冷たい水が染み込み、背骨を伝って滴る。静寂と凛とした静けさの中で、自分は氷の巨獣に包まれる小さな存在だと実感した。呼吸をゆっくりと続け、心拍を落ち着かせ、氷と時間が彫り出した魔法の彫刻を探求する静かな余裕を得た。



恐怖と向き合う
25歳で両親を癌で失った。母の死は私の人生を一変させ、信仰と信念が支えとなった。幼少期にインドネシアのプールで溺れかけた経験が水への恐怖を植え付け、船や水辺に近づくたびに不安が募った。そんな中、友人のスキューバダイバーの紹介で地元のダイブショップに通い始め、初めてのスキューバ体験で水中の世界に魅了された。恐怖と悲しみは水中で溶け、命の鼓動が高鳴る感覚を取り戻した。
フリーダイビングへの道
インストラクターのアンドリュー・リゼボルの指導のもと、フリーダイビングの入門クラスを受講。呼吸器具なしで息を止める技術を学び、毎回教室に入るたびに疑念と興奮が交錯した。プールで週4回のトレーニングを重ね、CO2耐性とO2テーブルでコンディションを高めた。フリーダイビングは私に平和と仲間意識をもたらし、船舶残骸や洞窟への探検、単一の呼吸で到達できる深さへの挑戦へと導いた。
氷上ダイビングの挑戦
冬になると多くのダイバーはプールや温暖な海へ移るが、アンドリューは私に氷上ダイビングを提案した。-20℃、風速50km/hの中、氷の穴を斧で開け、氷上に立つ自分に「本当にやるのか」と問いかけた。単一の息で氷の小さな穴から潜るという挑戦は、体と心の限界を試す最高のトレーニングとなった。

深海での静寂と感動
水面下の静寂は最初の痛みや不快感をすぐに覆い隠す。目を閉じて耳抜きをし、ゆっくりフィンで蹴り下げると、感覚が研ぎ澄まされ、平和と驚き、神秘と寒さ、そしてわずかな不安が交錯する。氷の天井を見上げると、鋭い層が幾何学的に広がり、自然の壮大さに圧倒された。10メートルの深さで見上げる氷の天井は恐怖を呼び起こすが、私にとっては自然の美しさへの新たな視点となった。
船沈没遺跡の探検
ブルース半島の湖底には多くの船舶残骸が眠る。シーズン中にアンドリューと共に氷の下で「Sweepstakes」という1867年建造の119フィートの二桁帆船の残骸を探索した。20フィートの浅さにも関わらず、静かな幽霊船の前で平和、驚き、悲しみ、喜びが混ざり合い、人生への新たな洞察をもたらした。
フリーダイビングがもたらした変化
フリーダイビングは、サメやマンタ、ジンベエザメ、エイ、ウミガメ、巨大カニ、タコなどと共に泳ぐ機会を与えてくれた。単一の息でこれらの世界を体験し、長年の水への恐怖を克服し、心の奥深くにある豊かな側面を探求できた。氷上ダイビングで培った規律と達成感は、私の人生に新たな目的と意味をもたらし、創造の驚異を目の当たりにする祝福となった。自由を手に入れた今、可能性は無限である。
この物語は Sidetracked Magazine Volume 15 に初掲載された。




