フェズとは何か?―歴史と象徴
フェズの定義
fez(フェズ)
名詞
1. 薄い箱形の帽子で、やや高く先細りの形状。赤いフェルト製が一般的で、房(たすき)が付くことが多い。
2. かつてニューヨークに存在した、後に閉店した有名なバーの名称。
フェズの歴史的背景
現在ではレトロなアイテムと見なされるフェズだが、近代化と退歩の両方のシンボルとして歴史に登場した。帽子の形状自体は古代からあるが、現在私たちが知るフェズは1826年にオスマン帝国のマフムト2世が制定した法令に端を発する。この法令は男性市民にフェズの着用を義務付け、当時のトルコ全土でターバンに取って代わることを狙った近代化政策の一環だった。フェズという名称は、同帝国の西端に位置するフェズ(Fez)という町が帽子製造の中心地であったことに由来するとされる。 しかし、マフムト2世の意図とは裏腹に、フェズはやがて「エキゾチックな東洋」の象徴として西欧で受容される。ヴィクトリア朝時代のイギリス人は、レジャーの際にフェズをかぶり、スモーキングジャケットを羽織ってシャーロック・ホームズの最新作を読むというスタイルを楽しんだ。 第一次世界大戦後の1919年、トルコ共和国の創設者ムスタファ・ケマル・アタテュルクは、国家の弱体化の原因を「後進性」に求め、急進的な社会改革を実施した。その象徴的な改革のひとつが西洋式服装への全面的な切り替えで、ベールやターバンの廃止が掲げられた。アタテュルク自身はパナマハットを好んだが、禁じられた服装のリストにはフェズも含まれていた。かつてはエレガントなシンプルさを誇った帽子が、英語圏の漫画に登場するギャグ的なアイテムへと変質したのである。
出典
本記事は John Bemelmans Marciano 著『Toponymity: An Atlas of Words』から抜粋し、許諾のもと掲載しています。




