アウトウェスト:外西部諸島での自転車とパックラフトの旅
はじめに
巨大なシャチが海面から跳び上がり、再び水中へと潜る様子を目にした瞬間、私たちの旅は始まった。ミンチ海峡を航行するフェリーのデッキで、息を呑むような歓迎を受けたのだ。車・電車・バス・フェリーという四段階の交通手段を駆使し、約24時間かけてイギリス最北端のひとつ、レウイスとハリスの首都ストーノウェイに到着した。
旅の計画
外西部諸島(アウトウェスト)を縦走し、山岳自転車とインフレータブルのパックラフトで島々を自走式に渡ることが目標だった。通常は南西からの風が支配的だが、出発直前の天気予報は強い北風を示唆。そこで、島の北端から南へ向かう逆走ルートを選択した。
ルイス灯台からの出発
ルイス灯台(Butt of Lewis)を後にし、300km先のバラ島を目指す。出発直後から強い向かい風に直面し、計画はすでに逆風に揺らいでいた。だが、体力と意欲だけは十分だった。最初の50kmは比較的スムーズに走破し、白い砂浜と荒々しい大西洋の波が広がる絶景のキャンプ地に到着した。
キャンプとコーヒー
砂丘の縁にテントを張り、金色の光が波間に揺れる様子を眺めながら、ジムが特製のコーヒー豆を淹れた。ブラジル産の最高級豆で、旅の疲れを癒すひとときだった。
山岳地帯の挑戦
内陸部へ向かい、レウイスとハリスの険しい丘陵を横断。砂利道は次第に消え、岩と泥炭の斜面が続く。風雨は激しく、視界はほとんどゼロに近い。7時間のハイキングの後、やっとシングルトラックに戻り、再び自転車で走り出したが、谷間の強風で進行は度々止まった。やっと山を抜け、道路へと出たとき、パブでラストオーダーを楽しんだ。
ハリス島の海岸線
翌朝、ハリス島の荒々しい海岸線へ。湾を巡るシングルトラックは絶景で、イギリス最大の島(本土とアイルランドを除く)を走破した。
パックラフトでの海渡り
パックラフトでの海渡りは初挑戦で、実現すれば史上初の記録になるはずだった。しかし、海上保安庁からは風速6の強風と視界不良の警告が出され、無謀な航海は命に関わると助言された。そこで、まずはベルナレイ島へフェリーで移動し、そこから北ユイスト島へ短距離着のパドリングを計画した。
南ユイストからバラ島へ
予想外の追い風がやってきて、南ユイストからバラ島へ向かう途中、風向きがUターン。午後には追い風で快適に走行し、バラ島へ向かうサウンド・オブ・バラが見えてきた。ここで、ジムは安全のためパックラフトから降り、私は単独で挑むことにした。
自転車を固定したままパックラフトで出航。最初は平穏だったが、徐々に波が高くなり、岩礁が続く狭い通路を通過する際は大西洋の荒波と対峙した。何度も舵を切り、体力と精神を振り絞り、ついに無人島フダイの東岸で波の勢いが和らいだ。最終的にバラ島の美しいビーチに到着し、2時間余りの航海を終えた。
最終章:バラ島での余韻
ジムと合流後、バラ島を自転車で一周。パックラフトでの挑戦は自然の力に対する謙虚さを教えてくれたが、300kmの旅路を自力で完走できたことは大きな達成感となった。













