森が轟く場所
夜のインド・ネパール国境での光景
満月が雲に隠れ、薄い道は闇に飲み込まれる。ヒマラヤ東部の雪峰は暗闇に覆われ、農家の灯りや花火、携帯電話の光が野原に点在する。自作の大砲でオレンジ色の火花を空に放ち、遠くの住宅や土の小道からは探照灯が照らし出される。叫び声、無線の雑音、花火の音が交錯し、まるで戦場の前線を思わせる。
パトロールジープのサイレンが鳴り、ヘッドライトが点滅する中、農夫が作物に光を当てる。そこに、巨大なアジア象がゆっくりと水田を食べている。牙は鋭く、右側の頭部からはムス(発情期)の黒い分泌物が滴り落ちている。象は周囲の騒音に動じず、静かに食事を続ける。その横で、仲間が大砲を撃ち、轟音が鳴り響くが、すぐに静寂が訪れる。象は「ラマ」と名付けられ、遠くの木々からは象のトランペットのような鳴き声が響き、続いて地鳴りのような低い咆哮が全身に震える。
象と人間の共存を求めて
この瞬間が、私が2年で3度北ベンガルへ戻る理由だ。野生象とセルフィー死亡事故の単なる話から、インド北部の人と象の共存を深く理解しようとする探求へと変わった。
かつては自然と人が微妙なバランスで共存していたこの地域は、人口増加と森林伐採により、象の移動路がバリケード化した。鉄柵、茶園、幹線道路、急行列車、そして稲作農家が点在し、象は栄養価の高い作物へと食料を求めるようになった。その結果、毎年400人以上の人命と100頭以上の象が犠牲になる人象衝突が頻発している。
象に関する誤解と現実
アジア象は絶滅の危機に瀕しており、アフリカ象とは異なる要因で急速に減少している。最大の脅威は密猟ではなく生息地の喪失である。アジア象は雄だけが牙を持ち、全ての雄が牙を持つわけでもない。インドでは4,000年以上にわたり、人と象は同じ土地を共有し、働くパートナーとしても利用されてきた。古代アショーカ王が紀元前300年に制定した最初の野生動物保護法は、象を神として崇め、殺すことに厳罰を課す文化的背景を示す。
現地での取材と体験
私は夜通し、ガイド兼写真家・アヴィジャン・サハと共に現場にいた。アヴィジャンは象の個体識別や群れの記録、地域住民との橋渡しを長年行ってきた。地元行政官のトゥファン・マリックとその兄弟、農家のキショーレ・プラダンも同行し、象に作物を荒らされた経験を持つ。
ムス期のラマは攻撃的になるが、私たちは慎重に距離を保ち、必要ならば薄い金属の小屋の隙間に身を潜める指示を受けた。若者たちが花火やライトで道を照らし、象が通過しやすいように道路のカーブで待機する様子は、まさに人と野生動物の緊張感が交錯する光景だった。
人象衝突の実例と感情
ある夜、雄象が農家のトイレで男性を踏みつけ死亡させた事件が起きた。アヴィジャンは「復讐的な殺害」と語り、地域の怒りが高まっていることを指摘した。一方で、雄象が朝、米酒の貯蔵庫に侵入し、子供を鼻で優しく持ち上げて安全な場所に下ろすという奇跡的なエピソードも報告された。
解決に向けた取り組み
インド全土で象の移動路が遮断されていることを指摘し、WTI(Wildlife Trust of India)などが101の「グリーン・コリドー」保全区画を設定。地元ボランティアやNGOが安全通路の設置、作物保険、フェンスの代替、列車速度規制など多角的な対策を進めている。
この地域の人々は私の友人となり、彼らの献身的な活動は大きなインスピレーションだ。私たちは単なる見出しや写真だけで判断せず、文化的・歴史的文脈を踏まえて真実を伝えることを目指す。
夜明けと希望
午前2時半、私たちは宿へ戻る途中、隣家の木から食事をしていた雄象に遭遇した。仲間のトゥファンの兄が象を追い払うと、象は驚くほど落ち着いて離れた。夜空にはカンチェンジュンガとエベレストが白く浮かび、私のヘルメットは守護のお守りとなった。
この体験は、象が私たちに何かを教えようとしていると感じさせる。共存のためには、食料・住居・安全という基本的なニーズを満たす実効的な解決策が必要だ。時間はまだある。象の知恵に耳を傾け、行動に移す時が来ている。
この物語は Sidetracked Volume 17 に初掲載された。




