血管川(Bloodvein River)での12日間パドリングと先住民スウェットロッジ体験
序章:スウェットロッジの熱い体験
ドラムの音が耳元で鳴り響き、心拍はハチのように速くなる。汗が体からブランケットに滴り落ち、熱と鼓動に追われて逃げ出したくなる。私は地面に丸まって横たわり、先住民の長老が歌う癒しの歌に身を委ねた。暗闇の中で仲間の姿は見えないが、同じ苦しみを抱えていないかと祈った。
長老の歌が終わるとドラムの音は次第に遠のき、テントのフラップが開かれ、冷たいマニトバの空気が流れ込んできた。12日間続いた灼熱から解放され、私たちは外に出て毛布と会話で体を温めた。
しかし頭は血管川の急流を思い出し、氷点下の顔、慢性疾患との闘い、巣を守るスズメバチの群れ…と、白水の旅の最も過酷な部分は、実はこの先住民のスウェットロッジだったと気付く。
血管川とは
血管川は、先住民の戦いが多く行われたことに由来すると言われる名前の通り、マニトバ州奥地を220kmにわたって流れるクラスIIIの激流が80以上ある川だ。植民地時代、激流は毛皮商人の進入を阻み、外部からの影響が少ないまま自然と先住民コミュニティが保全されてきた。
この地域には、ポプララピッズ、リトルグランドラピッズ、パウィンガッシ、ピカンギクム、血管川ファーストネーションの5つの先住民が暮らし、2018年7月1日にはカナダ初の文化・自然ユネスコ世界遺産「ピマチオウィン・アキ」が認定された。
パドリングの旅路
ウィニペグの街角で仲間と飲みながら血管川への挑戦を思い立ち、数か月後にシーペーンで川源へ飛び、旅が始まった。初日はカナダシールドの岩と熱い日差し、虫の大群に囲まれた典型的なマニトバの川だった。
2日目、血管川の名前の由来が見えてきた。川底を走る赤いマグマ岩が血のように光り、私たちの道標となった。その日、ボートが急流で揺れ、私は船体の側面に掴まってバランスを崩し、冷水に投げ込まれた。以降、天候の激変や凍結した装備、霧に包まれた朝など、自然の厳しさを身をもって体感した。
キャンプは毎日がサプライズ。岩が突き出た場所や森の中の開けた場所、時には凍ったPFDが吊るされたままの光景に出会い、カナダの冬が早く訪れたことを実感した。
先住民コミュニティとの交流
旅の最終日、血管川ファーストネーションの集落に到着した。約1,000人が暮らす小さな町で、地元の店や犬たちと触れ合い、学校の子どもたちとレスリングの練習やプレゼンテーションを行った。長老からは、ユネスコ世界遺産の意義や若者への誇りについて語られた。
その夜、長老の家でスウェットロッジに招かれた。10年ぶりの体験で、熱に包まれながら先祖代々受け継がれる儀式の力強さを感じた。長老は「若者が毎日でも参加できたらいいのに」と笑い、私たちの心に深く残った。
旅の余韻と結びつき
帰路の6時間は静かで、冒険の終わりに漂う寂しさと、スウェットロッジで呼び起こされた感情が交錯した。都市の喧騒や仕事、請求書に戻るのは複雑だが、次のパドリングやキャンプのことを考えるとシンプルに思える。
火を囲んで語り合ううちに、私たちはまるで中世の騎士団のように絆を深めた。時に衝突はあっても、互いの安全と幸福を守ろうとする気持ちが、今でも続くマニトバの家族のような結びつきを生んだ。





