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失われた撮影

序章:テントの外の足音

ある晩、テントの外で足音が聞こえて目が覚めた。野生動物のことを思い出し、リスかそれ以上のものかと不安になった。マティは勇敢にもテントを開けて外を覗くと、そこには牛がテントの杭をかじっていた。笑い声で緊張が解けたが、すぐに十頭以上の牛の群れが鈴の音を鳴らしながら通り過ぎた。古いミルクロード(Mjølkevegen)と呼ばれる道だった。

ノルウェーの大自然とキャンプ生活

人里離れた場所で、数キロごとに点在する夏の農場だけが見える。牛と子牛の群れが広がり、丘陵が次々と姿を消す。私たちは美しい山岳風景の中を自転車で走り、草葺き屋根の小さな山小屋に宿泊した。トナカイの角が玄関上に飾られ、暖かな薪ストーブとコーヒーで疲れを癒す。強風と戦いながら、太陽と穏やかな天候を祈った。

祖父の写真アルバムと旅の目的

マティの祖父、ボブ・ビンズ(1927‑2012)の未公開写真アルバムを手にしたことが、今回の旅の出発点だった。1950年代初頭のスカンジナビア旅行の写真は、砂利道、木造教会、滝といった自然美に満ちている。私たちは祖父の足跡をたどり、同じ景色を再現し、失われた撮影(Lost Captures)を見つけようと決意した。

ルート作成と現地の協力

アルバムには場所の情報がほとんどなく、滝や町の名前だけが記されていた。そこで、現地のノルウェー人ライダー、マリウスの助けを借り、写真に写る可能性のある地点を特定した。さらに、オスロとベルゲンを結ぶ山岳自転車ルートをオンライン地図で調査し、世代を超えた旅の章を計画した。

バイクパッキングの体験

マティはヨーロッパやタスマニアで何度かバイクパックを経験しており、自然と一体になる姿はまさに「自分の居場所」だった。私は初心者だったが、オスロ行きの片道フライトで未知への一歩を踏み出した。荷物は自転車と必要最低限の装備だけ。興奮と自由、そして少しの不安が入り混じった感情で胸が高鳴った。

キャンプと食事

ノルウェーの「自由に歩く権利」法のおかげで、風が強い場所や水辺近くにテントを張った。夕食はさつまいも、ひよこ豆、麺類、米、野菜とシンプルながら栄養たっぷり。毎晩、ダウンキルトで暖まりながら読書を楽しんだ。

過酷な天候との闘い

晴れた青空は稀で、ほとんどが強風と雨だった。濡れた靴下と凍える足、風で乾いた唇と赤くなる頬。頭風か雨かとマティに叫ぶと、彼は「どちらでもない!」と叫び返し、防水ジャケットに身を包んだ。毎日のように濡れた靴下を履き替え、泥にまみれた足でペダルを踏むのは苦痛だったが、壮大な景色と祖父の足跡をたどる喜びが支えになった。

スキー小屋と休息

疲れたときは、山岳スキー小屋が救いとなった。温かい飲み物と短時間の休憩で体力を回復し、観光客やハイカーと顔を合わせる不思議な瞬間を味わった。

失われた撮影の発見

美しい滝と緑の谷が続く区間で豪雨に見舞われ、キャンプ場は洪水で閉鎖された。雨の中、偶然見つけた高級ホテルのロビーで靴下を乾かし、テレビと温かいベッドで一夜を過ごした。これはまさに「銀の裏地」のような救いだった。

旅の終盤、祖父が訪れたと推測される谷へ到着。写真と現地の風景をスマートフォンで合わせながら、古い未舗装道路を探索した。トカ渓谷の荒れた道で、ついに探し求めていたシーンを発見した。バスが砂ぼこりの曲がり角を曲がる写真と、目の前にある同じ曲がり角が一致したのだ。60年の時を経て道路は舗装され、植生は荒れ、破片が散らばっていたが、形は確かに同じだった。マティは興奮しながら祖父と同じ構図を再現しようと走り回った。

1か月のノルウェー旅で、ゴシック様式の木造教会、滝、壮大な眺望など、祖父の写真の大半を再現できた。特にバスが急勾配の渓谷を走るユニークな写真の再現は最高の喜びだった。祖父の足跡をたどり、写真と現地を照らし合わせることで、家族の歴史に深く触れた。

Lost Captures は Sidetracked Volume 17 に初掲載。

Bob Binns (1927‑2012) を偲んで。



失われた撮影

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