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イラク・クルディスタンでの山岳遠征:ハルグルド山への挑戦と撤退

はじめに

イラクの山岳での登山は稀な機会であり、私にとっては大学の期末試験直前のイースターに訪れた特別な冒険でした。イラク・クルディスタンのザグロス山脈にある国内最高峰チェーカ・ダー(Cheekah Dar)への挑戦は、ニューカッスル大学の学位取得よりも優先されました。10日間だけ復習を犠牲にし、パートタイムで働いていた探検会社シークレットコンパスの遠征に同行することになりました。チェーカ・ダーはこれまでにわずか2回しか登頂されておらず、昨年初めて冬季に登られました。

エルビル到着と予想外の障壁

北部の古代都市エルビル(Erbil)に降り立つと、6000年前に遡る遺跡と近代的な街並みが混在し、空港は厳重に警備されていました。土産品の代わりに軍用品が売られ、周囲の西洋人は主に石油産業やNGOの関係者で、観光客はほとんどいませんでした。私たちは山岳町チョマン(Choman)へ向かい、チェーカ・ダーへ続くルートを計画しましたが、現地警察に呼び出され、数時間離れた地域の支配者と会うことになりました。

警察と支配者は、イラン側の国境近くにあるチェーカ・ダーはイラン軍が巡回し、トルコ空軍の爆撃が頻繁に行われていると主張しました。その結果、代わりにイラク第2位の峰、ハルグルド山(Mt. Halgurd)を登るよう要求されました。交渉は高級な邸宅で行われ、所有者は新型レンジローバーを2台所有しているなど、まるでイギリスの田舎のような光景でしたが、非常に怪しさを感じました。

結局、私たちは警察の保護下で山へ向かうことになり、夜は警察署で過ごすことに。地元の人々はとても親切で、家に招いてくれたり、銃の展示や音楽でもてなしてくれました。クルド人は観光客を歓迎し、クルディスタンがイラクでも比較的自治が進み安全な地域であることを実感しました。

ハルグルド山への挑戦

翌朝、警察のピックアップトラックでハルグルド山へ向かい、足元に雪が広がる中、重い荷物(20kg以上)を背負って登り始めました。3月末にもかかわらず降雪は多く、雪深さと広がりに苦戦しました。さらに、地雷原の交渉がチームの不安を煽りました。

午後になると天候が急変し、白濁した視界の中で前方のクライマーが小さな崖に転落しかけました。氷斧での止め止めが功を奏し、数百メートルの滑落を防ぎました。その後、風速が非常に強くなり、テント設営に16時間以上かかる厳しい夜を過ごしました。テントは揺れ、まるで棺桶のような状態でした。

次の日の朝は晴天が戻り、再びクランポンを装着し、標高3,000m付近まで登りました。標高が上がるにつれ呼吸が苦しくなり、風と横から吹き込む氷雪が顔に当たる過酷なコンディションが続きました。ハルグルド山は冬季登頂が未踏で、私たちにとっては新たな挑戦でした。

イラク・クルディスタンでの山岳遠征:ハルグルド山への挑戦と撤退

天候悪化と撤退の決断

標高3,500mで休息を取った後、天候はさらに悪化し、午後と翌日も悪天候が続く予報が出ました。チームは「summit fever」に駆られつつも、安全第一を優先し、撤退を決断しました。雪と強風、白濁した視界の中での登頂は危険すぎると判断したのです。

撤退途中、ノルウェー人チームメンバーのキットがスキーを装着し、イラク初のスキー体験を果たしました。私たちは廃屋に避難し、ストーブでお茶とコーヒーを沸かしながら嵐の夜を過ごしました。

イラク・クルディスタンでの山岳遠征:ハルグルド山への挑戦と撤退

小峰への挑戦と最終帰還

翌朝、一時的に晴れ間が見えたため、未踏と思われる小さな峰に登頂しました。これがチームの士気を少しだけ回復させましたが、再び天候は悪化し、二晩続けて小屋に閉じ込められました。

最終日は天候が回復しないことを受け、山岳地帯からの離脱を決めました。短い滞在は失敗に見えるかもしれませんが、現地の温かいもてなしや予期せぬ制限、未踏の山々と戦争の傷跡が残る街並みなど、イラクの山岳遠征は貴重な冒険体験となりました。

まとめ

イラク・クルディスタンの山は、冒険心と安全管理が交錯する場所です。現地の人々の親切さと、予測不能な天候・政治的制約を乗り越えることで、登山者は本当の意味での挑戦と成長を得られます。次回は、より良いコンディションで再挑戦したいと思います。

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