北極へ帰還する旅
ブロックス山脈での三日目
広大なブロックス山脈の荒野での三日目、我々はノアタック川のほとりにあるキャンプから、午後のハイキングで見えたドーム状のピングォへ戻ってきました。同行したのはジム・シンガーとアンドリュー・‘ティップ’・テイラー。数年にわたってメールでやり取りしてきた二人と、ようやく直接会って親交を深める機会となりました。ハイキングは足を伸ばし、残りの食料と装備の補給便を待つ時間から解放される貴重な時間でした。
三日前、ブッシュパイロットは嵐と近隣の山火事による視界不良のため、ゲート・オブ・ザ・アークティック国立公園への飛行を1回に制限されました。我々は5人全員を輸送し、ほとんどの装備(ボート含む)をベトルスの空港町に残し、翌日再び届けてもらう計画でした。
食料の配給と友情の語らい
夜になると、食料の配給計画を再検討しました。ジムとティップにとっては新たな経験ではありません。二人は1975年にユーモン川で出会い、友情を育んできました。哲学の元教授と核医学のテニュア教授という異色の組み合わせで、40年以上にわたり北極の川を探検しています。ティップは「儀式は人間の活動に大きな意味を与えるが、時間とともにそのインパクトは変わる。偶然にジムと川を下るようになった」と語ります。
再び空が開け、装備を回収
翌朝、雲が晴れ、雪をかぶった山々が姿を現しました。朝日の暖かさがテント内に差し込み、遠くからプロペラ機のエンジン音が谷に反響しました。パイロットは小さな湖に着水し、我々の装備を降ろした後、ベトルスへ戻りました。我々は湿った地面を歩きながら川辺のキャンプへ装備を運びました。ティップは「年齢とともにできることに制限は出てくるが、冒険は若者だけのものではない」と答え、ジムとティップが大きなドライバッグと金属製ドラム缶を肩に担ぐ姿は、年齢に関係なく冒険は続くことを示していました。
パックボートの組立
ジムとティップはすぐにパックボートの組立に取り掛かりました。ハードシェルやインフレータブルのカヌー、クレッパー・カヤックなど様々な船を経験してきた二人にとって、パックボートは初めての挑戦でした。飛行機で荷物として運べる設計ですが、組み立てには手間がかかります。その結果、アヴォン・ラフトよりも速く、操作性に優れた船が完成しました。
ノアタック川とは
ノアタック川はアラスカ北部、ブロックス山脈の北側を流れる川で、ゲート・オブ・ザ・アークティック国立公園から西へ約400マイル(約640km)伸びる、北米で最も手つかずの長い川の一つです。私たちは川に乗り込むのを待ち遠しく思い、午後6時の出発を計画しました。ジムは「1980年にマッチャラク湖からノアタック川を下った」と語り、ティップは「35年前にこの川を下ると予想したら信じなかっただろう」と笑いました。
川下りと出会い
川を下り始めた瞬間、ジムとティップの謙虚さと静かな洞察が体験を新たな次元へと引き上げました。ジムは「川は魅了し、生命を持つ。川は人を別の場所へ連れて行く」と語ります。
クグラク川へのハイキングと熊との遭遇
翌朝、クグラク川を上り、ノアタック川沿いのキャンプを見下ろす谷へ向かいました。浅い川の向こう側で、2匹の若いグリズリーベアに出くわしました。ベアはこちら側へ渡り、距離を保ちました。我々は声を大にして後退し、安全な場所へ移動しました。ベアはサーモンを探すように川の向こうへ去っていきました。
湿原とツスクの湿原帯を抜け、雨に濡れた谷の中心部へと登り続けました。乾いた服装は失いましたが、雲と水蒸気に包まれた景観はそれ以上の価値がありました。ティップと私は「偶然が人生を形作る」ことについて語り合い、4年前に撮った写真がなければここにいなかったと実感しました。
過去の出会いと現在の旅
2011年、カリフォルニアのシエラネバダ山脈でジョン・ミューア・トレイルをハイキング中に、ミューア・パスの山小屋でジムとティップに出会いました。そのとき写真と連絡先を交換し、後にドキュメンタリー『MILE… MILE & A HALF』でジムにインタビューしました。やがて彼らから北極川の旅に招かれ、今ここに至ります。
山頂からの眺望と感慨
次の日は雲と雨の中、緩やかな川を下り、二つの山の麓にある第三のキャンプに到着しました。翌朝、さらに高い山へ向かうハイキングはツスクとブルーベリーが覆う急斜面でした。太陽が顔を出す瞬間もありましたが、すぐに雲が再び覆い、湿った岩盤の峰へと続きました。ジムは「年を重ねると、こうしたハイキングの価値がますます高まる」と語りました。
最終日の夕暮れと別れ
翌朝は凍えるようなテントと澄んだ青空の中、太陽が降り注ぐ川下りの日となりました。5頭のグリズリーとその子熊2匹に遭遇し、川岸で観察しました。夕暮れ時、川の流れに沿って大きな島にキャンプを設営。季節限定の島で、遅い夏の水位が引いたときだけ姿を現します。空は燃えるような赤と紫に染まり、遠くで狼の遠吠えが聞こえる中、静かに眠りにつきました。
最終日は激しいラピッドと雨が続き、ジムは「40年の旅を振り返ると、困難も素晴らしい思い出になる」と語ります。私は「濡れ、疲れ、空腹だが、ここ以上に行きたい場所はない」と笑顔で答えました。
ジムとティップはさらに8日間川を下りますが、我々はマッチャラク湖でパイロットの迎えを待ちます。雨と低い雲が長い遅延を予感させましたが、数時間後にビーバーが水上着陸し、急いで装備を積み込みました。離陸時のプロペラ音すら、ブロックス山脈の広大な自然に包まれる感情をかき消すことはできませんでした。ティップの言葉が胸に残ります。「やりたいことが山ほどある。全部やるにはもう一生が必要だ」。




