故郷を思い出す
序章: 旅の始まり
次の大冒険を夢見ていると、いつの間にか小さな島のことを忘れがちだ。広大な海岸線や伸びゆく森、登るのも怖いほどの山々に心が奪われ、イギリス本土に本当の荒野はないのではと、閉塞感や軽い閉所恐怖に苛まれることもある。
しかし、コーンウォールの荒れたビーチにカヤックを上げ、背後に暮れゆく水面を眺めながら息をつくと、目の前に広がるのは海と空だけだ。現代の喧騒の中でも、誰もいない海岸を静かに漕ぎ、潮のリズムに身を委ね、島が私たちに提供する自然の驚異を楽しみ、守ることができると改めて実感する。
仲間との出会い
大学時代に出会ったオリはインドやスマトラをトレッキングし、北極圏まで自転車で走った経験がある。一方、私はブリティッシュコロンビア州西海岸でノマド生活を送った一年を経て、故郷に戻ってきたばかりだ。二人の友情はカヤックを中心とした水上の冒険で築かれ、22・23歳という若さで大人への第一歩を踏み出そうとしている。
8月のバンクホリデーの週末、オリと私はパルトマス近くのサルタッシュからコーンウォール南東部のルーへ、英国でも最も貴重な海岸線を辿るカヤック旅を計画した。
出発と航路
天候は完璧で、波は穏やか、太陽が二日間照りつけ、雨や風の予兆は全くなかった。防水装備は念のために持ったが、実際にはジーンズと赤ワインのボトルだけで、静かなビーチで焚き火を囲む夜を想像していた。土曜日の午後遅く、タマーブリッジ下の桟橋から出航した。
最初の数マイルは潮の流れに逆らう苦労が続いた。タマーハーバーの土手をたどり、ラムヘッド遺産海岸へ向かう。パルトマスの海軍基地の潜水艦が背中に大きく映り、まるで太陽に光るクジラの背中のようだった。やがてドラフト島が見えてきて、ここが大西洋への入り口であり、コーンウォール海岸への門になる。
海の宝と出会い
その島でオリの釣り糸に光り輝くマッケレルがかかった。小さくて実用的ではなかったが、ピンク・紫・ターコイズに揺れる姿はまばゆく、プルトマスサウンドの澄んだ水へと戻した。
カウサンド湾に短く入り込み、ラムヘッドの岩場へと向かうと、風と波から守られた海食洞窟が点在し、繊細な海洋生物が息づいていた。外洋へ出た瞬間、白いクラゲが水面に群れ、コンパスクラゲが陽光に照らされて透明な体を輝かせていた。
船だけで辿り着ける pristine なビーチでチョコレート休憩を取り、そこではハヤブサが定期的に訪れると聞いた。
潮間帯と海中観察
潮が緩むと岩礁と海藻が姿を現し、カヤックの下で6メートルほどの深さまで見える。クモカニが横に這い、群れのスズキが獲物を追う様子が見えた。
やがて光が薄れ、ターコイズからミルキーな青へと変わり、空はピンクに染まる。パドルを水に入れ続けるたびに、広がる水平線と色の変化に心が満たされた。
夜9時、ビーチにカヤックを上げると、残光の中でカメラを構えて砂の上を走り回ったが、最終的にただ星空を眺めることにした。濡れた装備を岩に掛け、完全に人がいないプライベートビーチにテントを張った。
焚き火と星空
漂流木で火を起こし、ブリティッシュコロンビアでのキャンプを思い出した。ナイフと缶の口笛で苦労しながらコルクを抜き、赤ワインで乾杯した。火は11時頃に消え、静寂が広がった。
やがて満天の星と三日月の下、銀河がはっきりと見える。コーンウォールはイギリスでも最も暗い空が保たれる場所の一つだ。
深夜12時半頃、オリがテントの中で足音を立て、私のジーンズを引っ張りながら暗闇でヘッドランプを探す姿が見えた。慌てて起き上がり、砂浜を追いかけた。
夜間フリーダイビング
浜辺に放置されたシートオントップカヤックの光が二つ、フリーダイバーのライトだった。彼らは夜の潜水で、海参、ヒトデ、イカ、ウニ、タコ、カメレオン色の猫ザメなどを観察した。
ルー島とアザラシ
翌朝、赤脚オジロウミツバメの群れに導かれ、ブリティッシュコーブを抜けてルー島へ。島は山羊とグレーアザラシの保護区で、世界のグレーアザラシの半数がイギリスに生息し、その多くがコーンウォールにいる。
島を回るとアザラシが岩の上で日光浴し、潜っては水面に顔を出す姿が見えた。私はすぐに潜水マスクを取り出し、スプレーデッキを外し、ライフジャケットを脱いで、レギンスとTシャツだけで冷たい海に飛び込んだ。
息を止め、体が冷たさに慣れるのを待ち、アザラシが近づくのを観察した。陸上ではのっそり見える彼らも、水中では俊敏で力強いアクロバットのようだった。
凍える体でカヤックに戻り、ルーのビーチに到着したときは全身がびしょ濡れで、耳まで笑顔が広がっていた。小さな島の魅力は思った以上に大きいと実感した。




