遊牧民の台所
偶然の出会いとトルコでの招待
運命的なタイミングで、次の料理体験が始まった。私はトルコの最安値ホテルの部屋で、湿気と暗闇に包まれ、胃の痙攣に苦しんでいた。前日に飲み過ぎた黒茶とタバコが原因だった。体調不良のため、朝のサイクリングは中止し、部屋で休むしかなかった。
そんなとき、マットが市場で調達したものを持ち帰り、にこやかに言った。「起きてくれ、招待が来たんだ。これ、きっと気に入るよ」。
クルバン・バイラミへの招待
私たちはイスラム暦で最も重要な祭りの一つ、クルバン・バイラミ(犠牲の祭り)に特別ゲストとして招かれた。この祭りは、預言者アブラハムが息子イシュマエルを犠牲にしようとした信仰の試練を記念し、代わりに羊が捧げられるものだ。
ホストのラマザンは、貧しい人やホームレスを含むすべての人が祭りに参加できるよう配慮していた。
牛の屠殺とチームワーク
私たちはラマザン家の庭へ向かい、背中に横たわる死体の雄牛を目の当たりにした。血に染まったアマチュア肉屋たちが、刃や斧を手にしていた。
経験豊富な老農家の妻が指揮を執り、牛は正確かつ迅速に解体された。脂が滴る臓器や、完璧に切り分けられたステーキが次々と現れ、解体の手際は圧巻だった。
一時間後、血痕はすべて拭き取られ、泥まみれの皮だけが残された。その皮は、地震で被災した東部のバン市へ支援物資として送られる予定だった。
祭りの食事
昼食は、家族の男性長老三人と床に敷いた低いテーブルで共にした。女性たちが用意した料理は、熱々のトルコ風スープ「コルバ」、炒めた緑のピーマン、牛肺のシチュー、そして温かいチェリーの煮込みだった。
たった一時間で屠殺、解体、料理、食事が完了するという体験は、シンプルでありながらも圧倒的だった。胃の不調にも関わらず、世代を超えた家族の絆とホスピタリティに心を打たれた。
旅の始まり
2年前、2010年の中頃、私たちはパブで旅の計画を語り合っていた。「自転車でゆっくり、身近に、脆弱さを抱えながら各地の料理文化に浸る」――それが私たちのビジョンだった。
目的地は、イングランド南部の小さな村と、アフリカ最南端の都市の郊外。途中には山脈や砂漠、アラブの春、数多くの食文化、スパイスバザール、肉屋、パン屋、路上ベンダー、家庭料理人が待ち受けていた。25か所の国境検査や官僚的な障壁、20,000km以上の道路が冒険とチャンスを提供した。
旅の集大成と学び
4年後、501日間の旅は完結し、自己出版の夢が実現した。数々の事故や病、負傷、共に食した料理、そして見知らぬ人々から受けた無償の親切が形となった。
旅の中で一貫して見られたのは、食が持つ驚異的な社会的力だ。金銭や言語、階級、信条を超えて、食事は人々を結びつけ、祝福し、感謝を表す最も効果的なツールである。特にイスラム社会では、見知らぬ客を自宅に招き入れ食事を共にすることが最大の名誉とされている。





