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北極圏への挑戦:自転車で辿る過酷な旅路

はじめに

「しばらくはここで止まろう」――雨が止むことなく、気温は氷点下。850kmを走り抜いた私は、足の指先が凍り、チェーンの修理中に指を負傷した。湿った岩場で、雲や死んだ動物たちと会話しているような錯覚に陥り、巨大な蚊が執拗に追いかけてくる。最も苦しいのはサドルの痛みと左足のアキレス腱だ。

苦悩と決意

自転車と冒険は大好きだが、今回の状況は限界を超えていた。ビール片手にテレビを観ていたい気持ちが募るが、周囲は苔、地衣類、石、虫、低木、数本の木だけ。帰る手段もなく、孤立したままだった。

左アキレス腱の痛みが増し、薬も尽きた。『あと150kmで北極圏だ』と自分に言い聞かせ、再びペダルを踏み出す決意を固めた。

不思議な出会い

森の中で雄大なトナカイが現れ、黒い大きな瞳で私を見つめた。まるで『走り続けろ』と囁くかのように。トナカイは一度立ち止まり、再び私を見つめた後、森の奥へと去っていった。

さらに別のトナカイが現れ、何も言わずに仲間と合流した。その光景は幻覚かもしれないが、心に火を灯し、否定的な思考を黙らせて北へと進む勇気をくれた。

天候の転換と夜の奇跡

雨が止み、空は青くなり、太陽が顔を出した。夏至近くの緯度(66°44′33″)では夜でもほとんど暗くならない。午後11時頃まで走り続け、太陽が背中に当たる中でパスタを調理し、同じ服のままテントで眠りについた。

翌朝、冷たい北極の湖で水浴びを楽しんだ。自転車旅の中でこれほど水が心地よい瞬間はなかった。

不審な足音と緊張

深夜4時頃、テントに足音が近づく音がした。遠く離れた森の中での出来事に、アドレナリンが全身に走った。自転車のシューズを武器のように握りしめ、静寂の中で身を潜めた。音はすぐに消え、再び眠りにつくことができたが、あの音が何だったのかは今も謎だ。

最終区間へ

残り70km、目的地までの最後の一日。ロヴァニエミまでターマック道路で走り、そこから北極圏まで20kmだけだ。プロテインバーとソフトドリンクでエネルギー補給し、金曜の午後を迎える。

500メートル手前で旗が見えた。スウェーデンのヘビーメタルを聴きながら、最後のメートルで北極圏の標識に手を触れ、心の中で『Bien Mierda!』と叫んだ。2013年7月26日14時14分、ついに北極圏に到達し、北への自転車冒険は幕を閉じた。

その瞬間、世界最大の映画スクリーンに電気嵐が映し出され、北極の澄んだ空が暗闇に包まれた。祝福と帰路への期待が胸に広がる。


トラベルノート
  • プッシュ:北極圏の凍河での孤独な闘い

    嵐の夜 ジャケットの中で腕を解放しようと体をくねらせ、頭上に手を伸ばす。二つの帽子は落ち、凍える夜風が耳を刺す。寝袋の中でバッテリーやボトル、毛皮ブーツを探し回り、やっと帽子を見つけて耳にかぶせた。凍った手袋越しに寝袋の裾の紐を探し、何度か失敗した後に掴んで締め直す。時計は午前1時、まだ眠りは訪れていない。 太陽はすでに沈み、オーロラが空を舞い始めていた。緑の光がテントの開口部から見える淡い雪に揺らめく。ヘッドランプを点けると、氷に覆われた壁面に光が跳ね返る。気温は-30℃前後。カナダ北西部、北極圏の上にある凍った川のほとりでキャンプしているという、夢のような場所だ。南米の最南端からここまで一年かけて旅をし、今は世界一周自転車旅行の中間地点、北極海の氷岸から数日離れた場所にいた。氷の高速道路を辿り、春になるまで凍ったままの川を走っていた。 しかしテントの中は孤独で不安だった。壁が揺れ始め、帽子を再び耳から外すと、嵐が迫ってくる音が聞こえた。風の轟音が低くうなるように高まり、テントは圧力に耐えきれず揺れた。外を見ると、オーロラも星も消え、暗い雲が川岸を覆っていた。すぐにテントのドアを閉め

  • ドラゴンブレスを漕ぎ出す

    テントの側面に鼻を押し付けたまま目が覚める。氷がはがれ、草の上にカラカラと落ち、テントの扉を開けるとさらに氷が滑り落ちる。外を見ると、ウェールズの山々の頂に深いオレンジ色の光が差し込み、雲一つない空は海の青から北極の青へと変わり、パドルボードは氷の彫刻のように凍りついている。標高約600メートル、ブラックマウンテン山脈の最高峰すぐ下での4月、寒さは当然だが、想像以上に凍てつく寒さに驚く。コーヒーのストーブを点けた瞬間、目の前に現れたのは――ドラゴンブレス。その光景に息を呑む。 計画の始まり ちょうど1年前、ブラックマウンテン山脈の最高点ファン・ブリチェイニオグの尾根を歩いていた。南側からゆっくりと上がり、北東へと急峻に崩れ落ちる姿は壮大だ。その下にあるのが、ブラックマウンテン山脈(黒山脈とは別)に位置する二大湖のひとつ、リュン・イ・ファン・ファウルだ。 前回訪れたときは強風と横雨で視界は数歩先しか見えなかった。事前にレンジャーから聞いた話――湖は標高400メートル下にあり、朝日の光が岩壁の稜線を金色に染め、時折霧が水面に漂う「ドラゴンブレス」と呼ばれる現象が起きる――を確かめたくなった

  • 限界を超えて

    はじめに 『氷ではないはずだ』――それが私の最初の直感だった。なぜそれが可能性として浮かばなかったのかは分からない。ネパールに到着してから、天候の悪化でフライトが遅れ、計画の窓が狭まっていた。私たちの目標は、ライアンとリノが『Great Himalaya Trail(GHT)』の一部で最速記録(FKT)を樹立することだった。西から東へ、ヒマラヤとその麓を横断し、総距離1,400km、累積標高差70,000m以上を走破する計画だ。 二年前にライアンがこのアイデアを持ちかけたとき、私はすぐにロマンを感じた。『横断』と『ヒマラヤ』という言葉だけで、無数の映像と感情が頭に浮かんだ。人類の遊牧的な根源と、現代の定住生活に対する不安――それらは私の映像制作のテーマでもあり、ヒマラヤほどそれを体感できる場所はないと確信していた。困難は予想していたが、実現は可能だと信じていた。 氷の道と危機 ハイキングを始めて二日目、私たちはヒルサ村のすぐ下にいた。ここが出発点だった。目の前に広がる青い氷の帯は、緩やかな斜面で、1,000フィートの空中へと滑り落ちる危険な道だった。登山用具はなく、ランニングシューズと