西の13年
はじめに
1992年、大学時代の友人で環境科学者のスティーブ・スミスが、モーターや帆を使わずに人力だけで世界一周をするという構想を持ち込みました。当時、ヨーロッパや北米で自転車で大陸横断した人はいましたが、海を漕いで渡る人はほとんどいませんでした。スティーブは私に参加を持ちかけ、私はロンドン西部で窓拭きの仕事をしていましたが、このシンプルで壮大なアイデアに心を奪われました。
準備期間と自作ボート
計画と準備に約2年、船の製作にさらに1年を費やしました。完成したのは全長8メートル、幅1.4メートルのペダル駆動ボートで、2人が最大100日間補給なしで航海できる食料と装備を積めます。スポンサーは得られず、機材の寄付だけが得られましたが、資金は自ら借り入れました。
出発と大陸横断
1994年7月、グリニッジを出発し、フランス・スペイン・ポルトガルを自転車で走り抜け、ポルトガル沖の大西洋へボートを投入しました。食料は英国陸軍から提供され、まずはマイアミへ向かいました。
陸上では自転車、徒歩、インラインスケート、ローラーブレードを組み合わせ、インドネシア諸島ではカヤックや泳ぎで河川を渡り、海上ではペダルボートで大西洋・太平洋を横断、イスタンブールのボスポラス海峡など狭い水路は小型の漕ぎボートで渡りました。
移動手段の特徴
自転車は最も効率的で、1日100マイル(約160km)も楽に走れます。インラインスケートは北米大陸で未踏の挑戦でしたが、路面が悪いと1日50マイル(約80km)でも過酷です。カヤックは水上で自然と直接触れ合える点が魅力的でしたが、体力的にはペダルボートの方が1日50〜60マイルの航行が可能です。
世界一周の条件
ギネス世界記録とExplorerswebの認定基準を満たすため、地球上で正反対(対蹠点)に位置する2点を通過しなければなりません。この2点を通過すれば、全ての経度線を横切り、赤道を最低2回横断したことになり、半球だけでの旅行では認められません。
訪れた国々と出会い
最終的に37か国、5大陸、2つの海、1つの大洋を横断しました。特にイスラム圏のホスピタリティは印象的で、北スーダンでは現地の人々が食料や水を惜しみなく提供してくれました。砂漠の中をナイル川沿いに進むと、3000年前の巨大石像が砂に埋もれている光景に、インディアナ・ジョーンズ気分を味わいました。
旅の転機と目的の変化
26歳の頃は冒険心と自己証明欲が原動力でしたが、コロラド州で82歳の酔っ払いドライバーに衝突し、両脚を骨折して6週間入院する大きな挫折を経験しました。この経験が「自分は無敵ではない」ことを痛感させ、旅の意味を再考させました。
その後は、訪れた860校の学校で教育プログラムを提供し、若者に冒険を体験させることに重点を置きました。旅の最終段階では、シンガポールに到着するまでの11年が「ただやり遂げる」作業に変わり、旅の疲労感が強まりました。
旅の余韻と現在の活動
旅が終わった瞬間、まるで崖から落ちたような虚無感に襲われました。自分のアイデンティティが冒険と結びついていたため、生活に再適応するのに時間がかかりました。執筆活動がその再構築に大きく貢献しています。
現在は、サステナビリティの重要性を訴える活動に注力しています。自身の経験を通じて、次世代に環境問題への関心を喚起したいと考えています。
出版物とリンク
受賞歴のある書籍『Dark Waters』は、ジャスン・スミスの三部作の第一部で、以下のサイトから購入できます。
billyfishbooks.com/Store
サステナビリティに関する情報は、www.transitionnetwork.org および www.catamountinstitute.org をご覧ください。




